旅行記から食べ物のシーンだけ抜き出したような空虚感
★★★☆☆
著者はアジア各地を貧乏旅行したバックパッカー。
本書は旅のなかで出会った食事を30ほど取り上げたもの。南海のサザエで中毒した話、マンゴー泥棒と疑われた話、牡蠣で一儲けしようとした話など、興味を引くようなものが集められている。ところが、それぞれは面白いのに、なんとなく空虚感が拭えない。というのも、食べ物の場面だけがピックアップされ、そのほかの場面がすべて削ぎ落とされてしまっているからだ。旅とは日本出国から始まり、飛行機、入国、ホテルの選択、街を歩くなど様々な場面から成り立っている。こうした過程をこなしていくことで、異国の雰囲気に入り込み、食への期待も高まっていくというものだろう。それが省略されてしまっているから、本書には奥深さとか感慨とかが欠けているのだ。
軽く読む一冊ということだ。