それまでニューヨークを拠点に映画を撮り続けたウディ・アレンが、初めてロンドンを舞台に撮影。元プロテニスプレイヤーのクリスが、金持ちのトムと親友になり、彼の妹と結ばれる。しかしクリスは、トムの婚約者とデキてしまい…と、基本は複雑な恋愛模様のドラマが進行していき、後半はその様相が一変。あまりに見事な転換にため息がでるほどだ。脚本の構成の妙が発揮されたという点で、アレンにとっては数作ぶりの会心作といえる。
テート・ギャラリー、ミュージカル「白衣の女」など名物を惜しげもなく映像に入れることで、アレンがロンドンの撮影を楽しんでいたことが伝わってくる。イギリス上流階級のゴージャスな生活にもうっとり。テニスボールがネットに引っ掛かり、コートのどちらに落ちるかというネタが重要なカギになるのだが、ドラマのなかで、その使われ方が絶妙だ。何事も予定どおりにはいかないという人生の教訓をこれほど洒落っけたっぷりに物語にするのは、やはりアレンをおいていない。ラブシーンの演出にも、まったく老いを感じさせないし、キャストはそろって役を好演。「大人の映画」の見本のような仕上がりである。(斉藤博昭)
買いです。
★★★★☆
具体的に内容が語られることはありませんが、序盤で触れられるクリスの「罪と罰」についての「非常に興味深い解釈」がトリックの骨格になっています。小道具の使い方等、細部にまで神経の行き届いた、いかにもウディ・アレンと、思わず膝を叩きたくなる仕掛けに満ちた秀作です。半ば以降の、努めて平板を装ったスカーレット・ヨハンソンの怒りの演技も、個人的にこういった機会に恵まれた(?)ことはまだありませんが、なぜだか身につまされるような息苦しい気持ちになりました。
ゲームには勝ったけれど
★★★★☆
スカーレット・ヨハンソンの出演映画を追いかけて、ただそれだけで手にした1本でした。
でも、彼女はどうでもいいほど、ストーリーにはまった。
マッチ・ポイントでボールはネットに当たり、自分のコートに落ちる。ゲームセットがコールされて、勝負あり。
そんなプロローグと重なるように、テムズ川に投げたリングは欄干に跳ね返される。その結末は、嫌でもあとを引いて、心に微妙な蟠りを残す。
ゲームに勝っても、墓場まで持って行かなければならない重荷を背負えば、勝負には勝ったとは言えまい。
ウディ・アレンの映画は、あまり好きではなかったけれど、少し見直してもいいかな…
英国富豪
★★★★☆
舞台は、英国 ロンドン。
英国の富豪の家庭にうまく取り入ろうとする元プロテニスプレイヤーの
打算と破綻(?)を描く。
スカーレット・ヨハンソンの美貌は、ため息が出るほどであるのは、
他のレビュアーの仰る通り。
私がもう一つため息が出たのは、英国富豪の豪奢な生活である。
決して成金趣味ではなく、さりげなく、日常生活の中に別荘があり、
狩猟を楽しみ、乗馬するのである。
彼らに気に入られてしまうことが、人生の成功であり、嫌われたら
奈落の底。
悪意のない、しかし、究極の選択を迫る富豪の彼らは映画の世界だから
かもしれないが、無邪気そのもの。
この無邪気さに振り回され、精神の錯乱する主人公たちを誰も批判・嘲笑は
できない。
どこにでもいる男と女
★☆☆☆☆
ウディ・アレンの映画はコメディタッチでいつも人間の本質を描く。
えぐる様な描き方でなく、普通の人間の日常行動に愚かさと滑稽さを見出す。
クリスは野心家などではなく、単に楽をして豪華な生活が送れる“ひも“を自分の人生の目標とする。
そのために涙ぐましい努力もする、結構私の周りにもいるタイプの男である。(私自身そうかも)
そこには必ずひっかかるおバカな女性が不思議と現れる。
しかも彼女たちは必ず自信家である。
まるで何不自由なく、苦労も知らないクロエの様に。
無事結婚し社会的な地位も得たが、そこに魅力的なノラが現れる。
“ひも”は必ず家庭内の抑圧のはけ口として不倫に走る。
本作の不可解な存在はスカーレット・ヨハンソン演じるノラである。
彼女が真実の愛を求めているとは到底思えず、目的がハッキリしないし普通の人間の行動じゃない。
執拗にクリスに結婚を迫る姿は女の弱さなのか、負け犬の意地なのか。
終盤の殺人とマヌケな警察の描き方は、たとえシニカル・コメディとしても安直すぎる。
とてもサスペンスと呼べるものでは無いし、どんでん返しにもなっていない。
それも含めてウディ・アレン一流のアイロニーの表現なのだろうか?
脚本に感嘆!!
★★★★☆
とにかく面白いストーリー展開です。
ウディ・アレンらしい物語の展開と映画作り。出演者の魅力もこの映画をより魅惑的にしていると思います。
サスペンスであって魅惑的なラブストーリーです。結末に違和感を残さないように、映画は終わっているのに、物語のその後をそれぞれに考えて、見た人なりに結論を想像してもいいような僅かな余白を残しているように感じました。
見はじめたら途中で席を立てなくなります。見終わったら友達に貸してあげたくなります。
内容が深いか、浅いかの判断は多分人によると思います。
人生どちらに転ぶかは、ものの善悪とは別に存在するもののようです。
よく書けている脚本です。ウディ・アレンですから当たり前ですが、それでも思わず拍手してしまいました。
主役のジョナサン・リース・マイヤーズ素敵です。スカーレット・ヨハンソンも好演しています。
星4つなのは、私の正義感が着地する場所を見失ってしまったからです。そなんこと、どうでもいいんですけど。物語なんですから。面白いし。極上の出来ですし。お子さまランチを食べる予定で見たわけでもないし。
罪と罰は一体ものなんでしょうね。物語の後半にそれを感じました。