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主婦パート 最大の非正規雇用 (集英社新書 528B)

価格: ¥735
カテゴリ: 新書
ブランド: 集英社
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パートも職場の中堅に、そして大黒柱ではないが家計を支える柱の一つ ★★★★☆
○夫に主な稼ぎがある場合、妻の年収が103万円以下なら夫の所得から配偶者控除が受けられる。そして130万円以下だと公的年金、公的医療保険は夫の方の社会保障でカバーされ年金・保険料負担はない。
○でも桐野夏生の小説「OUT」まではいかなくとも、パート主婦に精神的にも経済的にもゆとりが感じられなくなっている。
○主婦のパートは1960年代からスーパー、ファミレスなどで始まり、企業は1980年にはパートの戦力アップのための工夫を、1990年代にはパートの基幹化を図ってきた。パートといえども、高学歴、正社員経験があり、能力は正社員に劣らない者も少なくない。でも、見えない天井の潜在意識下にあるのか、能力の高いパートの主婦といえどもパートの時間単価が正社員の時間単価の7から8割で妥当との意識を有している。でもこれも同一労働同一賃金の考えに急速に変わってゆくだろう。
○主婦の場合、子育て、家事、介護などがあり、フルタイムは物理的に無理があるので、短時間勤務正社員=パート社員が導入を期待される制度。企業側は、労働の内容の高度化の割には、低コストのパートは都合がいいかもしれないが、パートだってお人よしだけではない、重要な部分を任されれば、正社員の上司の言うことをハイハイとは聞かなくなり、正社員もパートのマネージメントとミスの後始末に時間も手間もかかる。
○1960年代には、精肉、魚介類などの販売部門には職人が牛耳っていて、専横、無法行為が見られた。そこで、職人技術を調べて、仕事の工程を構築し、マニュアル化し職人以外でも対応できるようにした。主婦パートでも職場を牛耳るボスに乱されることを避けたければ、パートの人材開発、作業分析をなおざりにしてはいけない。マニュアルがあればボスの技を伝授してもらうため手下になったり、悪弊を継承する必要はなくなる。
○次第に所得格差が大きくなりつつある今、夫婦の共稼ぎで何とか家計をやりくりする世帯がふえ、また、同一労働同一賃金は先進国では当たり前のことになってきている、税や社会保障の制度も多様な働き方にそって変化せざるを得なくなりつつある。ここ数年で主婦パートの実態も可なりの変化が見られるだろう。

○アンケートの設問をどんな状況で、どういう風に尋ね、配点をどうしたのかとか前提が分からなかったり、表現がもっと簡潔明瞭になるのではと感じるところもありました。
仕事は正社員並み、待遇は正社員の半分 ★★★☆☆
著者の調査が描く、主婦パートの境遇はつらい。6時間労働で家事もほとんど1人でやり…では心身ともに疲弊していく。今の主婦パートは売上競争、仕入れ、研修など正社員並みの仕事をこなすのに、半人前の労働者と見做され、給料も半分。国内最大の非正規雇用者なのに、家庭に入っているので派遣などに隠れて問題が顕在化しない。本書は、隠れた労働問題である主婦パートの問題点を指摘している。

労働問題の本だと、「劣悪な待遇の告発」一辺倒に終わってしまいがちだが、本書では、正社員並みの働きを追求し続けた、小売企業がくらったしっぺ返しが書かれているのも面白い。外食、小売バイト経験者なら分かると思うが、ボスバイトの問題だ。長く在籍していて、その店のオペレーションは社員よりよく知ってるけど、待遇は社員には届かないから、やる気がなくなり、勝手に店のオペレーションを作り替えてしまう。ボスがいないと店が回らないし、ひどいと商品を持ち帰ってしまうから、社員もボスのご機嫌を窺うようになってしまう。正社員なら転勤させればいいが、バイトはそうするわけにもいかない。店に社員が常駐しないので、改善の芽も放置され、店は荒んでいく。

店側にも隠れたマイナスが大きいことから、パート主婦のパートタイム正社員化が好ましいと著者は指摘する。主婦パートをもう低待遇に据え置く矛盾は解消すべきという著者の考えに同感だが、社会保険などの企業の追加的負担についてはどうまかなうのか。現在が不当な搾取だったから、企業が負担分を持つ、という考え方なのだろうか。また、正社員は解雇のハードルが非常に高いが、単純な正社員化では、良くも悪くも雇用の調整弁だったパートがなくなることで、主婦たちの手っ取り早い収入源のハードルが高くなるのでは、という心配もある。正社員に痛みを求めることが必要になるのではないかと思われるが、著者の考えを知りたいと思った。
主婦パート再考 ★★★★★
主婦パートの雇用問題を見事に描いている本だと評価したい。日本社会が構造的に変容しつつある時代には、従来からの「常識」でものを語ることは許されない。この本は、最近における主婦パート雇用の社会的意味の変容をさまざまな調査やヒヤリングに依拠しながら、「アリ地獄」型雇用の実態だけでなく、年金・税制や、家庭、企業経営との関連において主婦パートが抱える問題を多面的にえぐり出している。従来の主婦パート像を前提とした対応や「つけ込み」では、企業経営者もしっぺ返しを受けると警告を発する。著者の提言「パートタイム社員」制度の創設などに向けた努力が効率的な企業経営を展開する上においても、重要だという。そのためにも、企業経営をチェックする労働組合の活動の重要さを強調している。著者のチェーンストア研究の蓄積をふまえたセンスある分析と提言の書で、骨太の力作である。
 
主婦パートに問題あり ★★★★☆
本書ではマスコミで取り上げられることの少ない主婦パートの問題(現在は派遣社員の問題ばかりがクローズアップされている)について、問題点を分かりやすく解説している。

主婦パートの数は、派遣社員以上に多いと推測されるが、その問題点は派遣社員問題に遜色ないほど深刻化している。
派遣社員と大きく異なる点は、直接雇用であるため、急に切られることが少なく生活に困ることがないといった点であるが、そこに問題の根本が潜んでいる。
具体的には企業の優越的な地位を利用して、正社員並みの働きをさせる一方で賃金は正社員比大きく見劣りする点やサービス残業が常態化していることであるが、主婦パートは元々時間的な制約が大きい中で雇用されているということもあってこうした扱いに対しても非力である。この背景には社会制度も大きく影響していることも見逃せない。

また、本書ではこうした労働条件の問題に止まらず、家事・育児参加の少ない家庭では少子化が目立つ点などを指摘するなど、終盤では主婦パート問題が社会に及ぼす悪影響について警告を発している。

近年旦那の収入が減少・不安定化する中で主婦パートの数は増加の一途を辿っているため、この問題は頭に入れておきたいところ。
主婦パート・ショック ★★★★★
 ここのところ派遣の問題が注目を浴びている。この種の報道を見るたびに「非正規雇用がいかんと言うなら、いわゆる主婦のパートはどうなの」とかねがね思ってきたが、テレビでも取り上げることがないし、意外にわかりやすくまとまった本がない。テーマが身近すぎるせいだろうか。しかし、この本のタイトルにあるように主婦パートこそ最大の非正規雇用だ。政権交代で「130万円の壁」も節目にあるということだし、もっと考えていいような気がする。この本では、主婦パートが「アリ地獄型雇用」として成立し、それが「基幹化」することでさまざまな弊害が生じていることを「主婦パート・ショック」と呼んでいる。一方では少子化・児童虐待・離婚・DV、他方ではボスパートの反抗と、主婦パートが「壊れている」実態を実証的に指摘していて、少し驚く。代案は「パートタイム社員」だというのだが、たしかにこういう働き方もありだと国家的に認めていかないと、追いつめられる人が減らないと感じた。