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サラマンダーは炎のなかに〈上〉 (光文社文庫)

価格: ¥680
カテゴリ: 文庫
ブランド: 光文社
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炎のなかに ★★★★☆
冷戦中の学生運動から米英のイラク侵攻までを生き抜いた、
ひとりの男の生涯として読んでもいいのではないでしょうか。

リクツ抜きで、エンターテイメント性も高い。引き込まれます。

邦題を「サラマンダーは炎の中に」としたことには、翻訳者の本作品への深い理解と卓越したセンスがうかがえると思います。

火の精は、炎の中に。

彼は、ベルリンの学生運動の炎の中に身を投じた人物です。
そこにいた、もう一人の火の精、サーシャ。
原題は、Absolute Friends、無二の親友。

だが、炎が消えたら、どうなる?

イートン出身の元外交官僚、という肩書きのある作者ル・カレは、
ブッシュ+ブレア主導の中東戦争に厳しいコメントをしてきた人物でもあります。
しかし、そのブレアもまた、実はこの小説の主人公同様、名門パブリックスクール出身で、
法律家の妻によって左翼の政治活動に導かれていった、という経歴もあるようです。

炎の中に踊る主人公を描くル・カレの、温かく、しかし醒めた筆致には、
なかなか浮き足立った熱情に絡めとられない、古きよきイギリスらしい安定感がありますね。
思想書 ★★★★☆
 この本は、どういうジャンルに分類されるのか?非常に難しい内容でした。
 ル・カレの作品を読むのは初めてでした。そのせいか前半の3/4は非常に難解でした。理由は原文にあるのか訳文にあるのか?難解にしている理由は2つありますが、おそらく原文に起因する(ル・カレの作風による)ものと思われます。1つめは、ほとんどすべてが現在形で書かれているので時制がつかみづらいことです。2つめは社会のあり方、思想などが詳細に議論されているためです。加えて、原題が "Absolute Friends" ということから察せられるとおり、友情(理論を超えた人間の信頼関係)に関するバックグランドが大きく関わってきます。
 終盤1/4はスピーディーに話は進み、ややエンターテイメント性はあがります。しかし、一貫して背後に流れているのは、複雑な出生および生育背景を持つ2人の男の価値観を通して考えさせられる、社会状況、信頼関係、哲学などです。そのため、娯楽小説として本書を手にすると、「重い」と感じざるを得ません。そこから考えると、この本は現代の思想書の一つと考えても良いと思います。解説などによると「パックスアメリカーナに対する批判と反抗」を読み取るべきなのかもしれませんが、思想書から何を読み取ろうと自由です。軍産政治は否でしょうが、それでは何が真に正解なのか?考えさせられる作品です。
ル・カレの英米への激しい怒りの作品 ★★★★★
上下合わせて約800ページの作品だが、初めの700ページほどまでは、ルカレらしい難解ではあるが、示唆に富んだ会話と詳細すぎるほどの現場描写、そしてくるくる変わる時代の流れにやや辟易させられながら、最後は圧倒的な展開とルカレ自身の英米に対する大いなる怒りの表現で、抜群の読後感を残す作品になっている。主人公マンディはパキスタン生まれの英国人、欧州に帰ってから参加する70年代の学生運動で知り合ったドイツ人サーシャ。彼らはやがて英国諜報部の二重スパイとなってもかたい友情で支えあってきている。このあたりの時代の雰囲気をルカレは難解なまでの政治論議や哲学論議を絡ませながら見事に描いてみせる。やがて、9.11事件を経て、彼らに近づく謎の富豪ドミトリー。彼は欧州に自由主義者の学校を作るという名目で二人に夢を与える。それは、欧州でテロ組織壊滅という大義名分のために自作自演を行うという米国ネオコンの陰謀であること、米国と欧州諸国、なかんずく英国とが団結を深め、やがてイラクに侵攻するきっかけとなる。世界の世論をイラク侵攻に傾くかせんがための米国の猿芝居である。作品のいたるところにルカレの米国や英国に対する怒りがもえたぎっている作品だ。「ナイロビの蜂」で大手製薬メーカーに対して大きな怒りをぶつけたルカレであるが、この作品での怒りの対象は米国と英国政府なのだ。深くて大いに共鳴を受ける作品、流石ルカレ、ルカレ万歳である。あと2作の訳本出版が待たれる。