コンテンポラリーな美学と社会性が両立した作品集
★★★★★
日本は知られざる石灰産国であり、(石灰を原料とする)コンクリート建築物により都市化を果たした日本の裏風景として日本中の石灰採石場や工場が撮影されている。そこからエコロジーに関する考察や作家自身の記憶(=幼少児に石灰工場の近所に住んでいた)などに言及しながら、作家の言葉は万華鏡のように拡散していくが、若干取りとめが無いのは正直気になる。(でも、イメージを伝える写真家としてはそういう文章でも良いではないかという反論は認めます。)
この作家は、視ることや光など、撮ること自体に自己言及的な姿勢を崩さないコンテンポラリーな作風が魅力の作家だが、これまで写真集になっているシリーズでは結構、被写体自体の帯びている情報の社会性も大事にしてきたということを再確認させてくれる一冊です。ただ、そういうシリーズ以外の理知的な美学作品も大変魅力的なだけに、もっともっと色んな作品集が出版されてほしい作家さんだったりします。