オリジナルアルバムを4枚発表した後、満を持してのメジャーからのリリースである。全曲小松原氏のオリジナル作品であり、この手のCDにありがちな有名曲のアレンジは入っていない。そこは氏の一貫したポリシーでこだわりでもあるようだ。何といっても氏の作品の魅力はその独創性にあると思う。「タケル」や「桃源郷」、「文明開化」「Hiroshige」などに見られるメロディーラインは、他のアコースティックギタリストの楽曲ではなかなかお目にかかれない。「Voyager」のようなタッピング系や、ラグタイム系の曲も少ないのでルーツがわかりにくいのも逆に言えば個性だという気がする。これは個人的な推測だが小松原氏はバラード系に特にこだわりを持っているのではないだろうか。「くじら」や「Love Song」「ステッセルのピアノ」などを聴いているとそう思えて来る。美しいメロディーが際立つそれらはギターを弾く者ならぜひコピーしたい、と思わせる様な魅力に溢れている。12曲のうち新曲1曲、5曲が再録音なのでここから、オリジナルアルバムに遡ってもいいと思う。私的には3枚目の「Naturally」がお気に入りだが(「雲の湊」はこのBEST「Treasures」に収録して欲しかったなあ)。アコギのインストが好きな方、美しいメロディーに出会いたい方にはお勧めである。