おおまかな内容は以下のとおりだ。冒頭の2章で日本のビジネスシーンと求められる人材の変化を指摘する。以下、エグゼクティブサーチという仕事の中身、売れる人材の条件、ヘッドハンティングの具体例、外資系企業の企業文化、グローバルな人材の本質、これからの人材戦略など。著者の仕事は主に外資系企業への日本人のリクルーティングであり、「売れる人材」とは外資系企業でグローバルに活躍できる上級管理職を指す。条件を要約すると「多様な経験を持ち、創造的で柔軟な起業家的な人材。国境を超えて変革を起こせるプロフェッショナル」だという。しかし、今の日本にそのような人材はまれである。それもそのはず、著者が本書を執筆したのは「日本にはグローバルに通用する人材が極端に不足している。このままでは全体が“人材倒産”しかねない。そんな危機感を抱い」たからなのだ。
年功序列、終身雇用などの雇用体制を築いた日本企業は、工業化社会ではかつてない成功を収めた。しかし、グローバル化、IT化が進むなかで、時代は「“UP or OUT”(昇進か、退社か)の競争原理による外資系のモデルへと確実に動きつつある」という。外資系企業に長年勤め、世界のビジネスシーンの最前線で活躍する著者の指針を示した本書は、これからキャリアアップを目指そうと考えているビジネスパーソンには頼もしい羅針盤となるだろう。また、すでに「売れる人材」として外資系企業への転職を考えている上級管理職には、具体例や外資系の企業文化の章は必見である。(齋藤聡海)