ヴァーグナー以来の管弦楽的なオペラです
★★★★☆
このCDには、ロシアの作曲家アレクサンドル・ボロディンの代表作であるオペラ「イーゴリ公」からの8曲抜粋、および「中央アジアの草原にて」が収録されています。ブックレットには、ロシア語の歌詞を発音通りにアルファベットで記したものと、その英訳があります。指揮はテオドレ・クチャル、演奏はウクライナ国立放送交響楽団とあります。演奏時間は55分ほどです。
「イーゴリ公」は、ロシアの古い叙事詩「イーゴリ遠征物語」を題材にとったものです。本業が化学者であるボロディンは休日に作曲活動をしていたため彼の手でこの曲を完成させることはできず、同じロシア5人組の一人であるリムスキー=コルサコフとその弟子グラズノフが補筆・完成しました。なお、「イーゴリ遠征物語」は岩波文庫から刊行されていましたが、2007年3月現在廃刊のようです。
「イーゴリ公」は、このCDにも収められている「ポロヴェッツ人の踊り」が「だったん人の踊り」の名で有名ですが、他の曲はめったに聴けません。このCDにもある「序曲」、「ポロヴェッツ人の娘たちの踊り」は比較的有名です。上記3曲と「ポロヴェッツ人の行進曲」は、ヴァーグナーのオペラや「トゥーランドット」と同じくらいオーケストラが活躍します。管弦楽的な曲もよいのですが、独唱曲も意外と粒揃いです。ガリツキー(バス)はおどけた憎めない曲を歌ってくれますし、イーゴリ(バリトン)はなんとも英雄的な旋律を歌い上げます。
手軽に聴ける「イーゴリ公」のハイライト盤。このCDに意義はここにあります。ボロディンのもう1つの名曲「中央アジアの草原にて」も入っていることですし、かなりのお買い得品だと思いますよ。