なるほど!と思った
★★★★★
この本はいわゆるマニュアル本とは違うので、
「こういう木を描く人は、こういう人」というような細かいことは書いていない。
ちまたにそういう本は多いけれど、じゃあその木の細かい特徴を纏め上げ、その人の
パーソナリティー全体をどう捕らえたらいいの?どう所見としてまとめたら?
と考えると初心者には戸惑うことが多い。
でも、この本を読んでなんだか樹木画の見方の方向性が見えた気がしました。
根っこから吸い上げられたエネルギーが、幹から枝先へとどう流れるか、
そのイメージが大事で、その際「幹上処理」の問題が重要になると。
バウムを勉強したいけど、その辺りに戸惑いのある方にお勧めです。
バウムを臨床的に受け取る
★★★★★
本書は、第1章「バウムの思想的考察」と第2章「バウムの基礎研究」と第3章「バウムの臨床研究」からなる。第1章は、バウムそのものや、コッホの考えに関する思想的哲学的な論文がまとめられており、非常に示唆に富むものであるが、ユング派のように、神話や元型の知識を臨床に活かす訓練を受けた臨床家でなければ、役立つという実感をもって読むことは難しいように思われた。
第2章は、バウムを描いていくプロセスの中で描き手がどのような体験をしているか、幹の先でどのように収まりをつけるのかという描き手の心の動きに注目している。それは、テスターと描き手の間に流れている「まさにこの瞬間」に注目してバウムを読み取る点で非常に「臨床」的と言え、描かれた作品を「このような枝は○○をあらわす」と事後的に分析するサインアプローチとは決定的に異なっている。
本章で主張されているアプローチは、目の前のバウムを受け取るセラピストの姿勢に直接響くものであるから、この本を読んですぐさま「適用する」というわけにはいかない。本章を基に、自らの姿勢を常に耕し、訓練していくことが必要と思われる。
個人的な感想になるが、本書のアプローチに基づいてバウムを見ていくときのイメージと、コッホの挙げたような指標に基づいて見ていくときのイメージが自然にかみ合い、全体像がまとまってくるように、バウムの受け取り方を鍛錬していきたいと思わせられる本であった。
学者向け
★★★☆☆
バウムテストは白紙に自由に「実のなる木」を描く心理テストで実にシンプルながら様々な心理、人格、発達状況が反映され奥が深い。臨床心理の専門家にとっては基本であり永遠のツールであるだろう。著者らはユング心理学や描画法を得意とする京大臨床心理学派の方々で「京大心理臨床シリーズ」の一冊目として刊行している。筆頭著者は自身の数十年来の経験の中で集められた数千枚のバウムテストの、第一回目のケースを取り出したり、夏目漱石の書画に部分的に描かれた「木」を解釈し感慨に浸っていてややナルシステイック?随所に自分達の先見性、独自性(お得意のオンリーワン?)を自慢する所がやや鼻をつく。バウムは精神世界の深遠を垣間見る翻訳機のようなものであるが、コッホの原著を超える解釈本が出ていない。その意味ではバウム実践家の参考書の一冊といえる。