各分野における構築主義の系譜と浸透
★★★★☆
「商品の説明」に書いていなかったので注意しておくと、この本において上野千鶴子は編集として関わっており、全体は序章を含め10章で構成されていて、それぞれ異なる分野を扱い、10人の異なる著者によって構成されている。そして、前書きと後書きを上野千鶴子が担当している形式を取っている。
それぞれの章では、社会学、人類学、歴史学、医学といった様々な分野における構築主義の系譜と浸透について触れている。人文科学の領域としては網羅的であるといってもよいだろう。ただ、自然科学、科学哲学における構築主義(例えば「電子は存在するのか」といった問)に関しては、特別焦点を当てられていない。第六章「構築主義と身体の臨界」がこの分野に最も近いと思われるが、身体論に終始しており、物理学、数学といった話題は出てこない。
人類学、歴史学においては構築主義による衝撃、歴史学(人類学)のアイデンティティを脅かしたという側面、について研究者の生の声が書かれているのも興味深かった。また全体を通して、構築主義を無批判に受け入れるのではなく、絶えず批判的に考察しているのも本書の良いところに思えた。
入門書ではあるが…
★★★☆☆
本書は、構築主義を学ぶ上で教科書的な存在といっても良いだろう。しかし、本書の文章を見ると「悪文」がそのほとんどである。「推敲を怠った」としか言いようがない。是非、改訂版の発行を望む。
本書を踏まえずに語ることなかれ
★★★★☆
構築主義(constructionism,constructivism)の概要と、歴史学・文化人類学・社会学といった学問領域へのその影響を幅広く網羅した論文集。「言語論的転回」といった難しい概念が使われ、論文の叙述もとっつきにくいが、構築主義は理論に終わるのではなく、歴史教科書論争など社会の実践領域に大きな影響力を持っていることがよくわかる。構築主義の立場に立つにしろ、そうでないにしろ、社会科学を学ぶものは本書を熟読して理論武装する必要がありそうだ。