背徳的な「堕とし」に甘い成分を塗した絶妙な作品
★★★★★
全体的な作風こそ背徳的で強引な「堕とし」の展開だが、これに何とも甘いコーティングを施した特異な雰囲気を醸す作品である。田沼作品らしいワルさを見せる主人公だが、深い愛情と顛末後の覚悟も責任も持ち合わす一面も同胞している。予想だにしない展開を主人公が導き、それに困惑して拒むものの翻弄され、メロメロにされ、かしずかされ、そして最後にはうっとり幸せ気分にさせられてしまうヒロイン達にあって、そのメインはズバリ母。主人公の彼女の母である。この母を籠絡する前提として、彼女である娘(姉)は最初から堕ちており、真面目な娘の牝な痴態を母が覗き見てしまうところから物語が始まる。驚きながらも疼き出した母が抗えず扉越しに自ら慰めて絶頂を極めるまでが全体の約1/3。ここまでをじっくりねっとりしつこいくらいに描写しているが、まだこれは序章に過ぎない。続く母へのアプローチから本懐を遂げるまでに同じく1/3くらいかけて、困惑して抗おうとする理性と愉悦を覚えてしまう感性とがひしめき合いぶつかり合う母の心境と、その絶世の美貌と超絶な魅力に屈伏しそうになりながらも負けずに母をモノにしていく主人公の責めが繰り返し綴られる。遂に合体を果たした時の興奮はかなりのものである。そしてもう1人の、素直じゃない娘(妹)も瞬く間にモノにしてしまう。これも妹が内心主人公に惹かれているのを巧みに利用してはいるのだが、その無垢な可憐さを賛美もする主人公である。ただ、最後に至って急に今までの歪んだ愛の行為を消し去るかのような心暖まるドラマ展開を迎えるのが、違和感ととるか静かな感動ととるか、好みが分かれるかもしれない。しかし、凌辱一辺倒ではない、実に作者らしい独特の愛欲絵巻を(田沼作品としては)ライトに仕上げた作品ではなかろうか。