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金融無極化時代を乗り切れ! (文春文庫)

価格: ¥550
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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現状がよく分析されている ★★★★★
金融危機の現状および対策の考え方について筆者の意見が述べられています。
商社出身ということで現在の金融危機についてよく分析されており、説得力を感じました。
特に地方分権と農政に対する提言は納得する部分が大きかったです。
現在の日本の状況を認識することができる本です。
為替リスクはアメリカが持つ「オバマボンド」の可能性にも言及 ★★★★★
 第1章では、今回の金融危機をドルと金の兌換廃止を決めた1971年8月15日のニクソンショックから説き起こします。担保なき紙幣となったドルの価値は相対的に下落しますが、アメリカの軍事力が抜群であるという「一種の思い込みの世界的共有」を担保としつつも、さまざまなバブルを起こしては崩壊させていく、という大きな流れを描きます。

 そしてバブルの指標としてメインストリート(GDPにあたる実体経済)とウォールストリート(株式時価総額など金融経済)との比率をみていきます。ニクソンショック時にアメリカのGDPは1兆ドルでNY証券取引所の株式時価総額は0.6兆ドルでした。つまり10対6で実体経済の方が大きかったわけです。これが1990年代後半のITバブル期には10対12.5と逆転しますが、崩壊後は10対8に戻ります。そして今回の住宅バブル時には10対 12と再び、逆転して崩壊します。分かりやすい指標ですし、株、住宅に次ぐバブルはおそらくCO2取引か省エネ技術、太陽光発電、電気自動車にからむ証券ではないかとちゃんと指摘もしています(p.66)。

 さて、今回の金融危機。株式の時価総額に加え、債権の発行残高、貨幣供給量を加えた「金融資産」でみてみると、住宅バブルが起こる前の世界全体のGDPが30兆ドルで金融資産が60兆ドルだったのに対し、2006年には50兆円対180兆ドルまでふくれあがりました。要するにペーパーマネーが3倍になったわけです。では、これがどこまで下がるかということも予想しています。つまり実体経済が50兆ドルなら金融資産は100兆ドルまで縮小するので、株式時価総額は44%下落するのではないかと。さらにNY証券取引所の時価総額もほぼ40%下がっているので、「そろそろ落ち着いてくるのではないか」としています(p.47)。

 しかし、それでも残る問題がひとつある、と丹羽さんは指摘します。それはドルの信用が低下していること。これからもしばらくアメリカを中心とした経済は続くので、1978年にカーター大統領が発行した「カーターボンド」のようなものが必要になってくるのではないか、と予想しています。
ひとりの「愚かなる動物」としてできることは・・・ ★★★★☆
これだけ地位と名誉を得られた方の決して驕ることのない姿勢に、毎度のことながらただ敬意を感じられずにいられません。
最近盛んに取り沙汰されている「リーダー論」なるものについても、人間は所詮「愚かなる動物」であるという前提のもと、結局は「人間としてどう生きるべきか」ということに尽きるという主張も、実に的を射たものであると感じました。
本書では、将来の日本や日本人にとって大切なもの(地方分権、借金返済、「人と技術」、農業などなど)が取り上げられていますが、それを阻む官僚組織の体たらくや政治の無策ぶりにほとほと腹立たしく感じるばかりです。
無力な我が身を顧みるにつけ、やはり著者のような影響力の大きい方に日本の将来を引っ張っていただきたいと願うばかりです。
「経営者を突き抜けた見識と国家観・・」 ★★★★★
柔和な表情、優しい語り口、そしてわかりやすいコメント・・
TVで見る著者に嫌悪感を覚える人はまずいないだろう。
見識あり、そして人格者である著者は、政府の諮問委員会でも
重鎮的存在らしい。
日本のあるべき姿、それを阻害する原因・要因の解説、その
国家観に共感させられる。
サブプライム問題への言及はもちろん、国際金融危機の本質と現状
の解説は、ビジネスを通して世界を感じてきた著者ならでは!!
専門用語を並べ連ねる金融マンのそれより伝わってくる。
読み終えれば、自然に日本が見えてくる、世界が見えてくる・・
そんなイメージ。
予備知識がなくてもその国家観・世界観に触れることができるのが
この本の特徴でもある。
なお、本書の印税は「国連WFP協会」の寄付されるとのこと。
丹羽さんらしい・・・