暗記や解法では得られない「わかる満足」を目指した参考書
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図鑑や一般向けの教養など、中学卒業レベルまでの内容ならこれ一冊あればもう十分と思えるほど、非常に良くできた本です。もちろん受験用参考書としても強くオススメできます。
ふつう「受験むけ」と銘打った本の中身というのは、多くが「必要なことがらを効率よく身につけるにはどうしたらよいか」を目指していると思うのですが、本書は全く違っています。「わかる」ということの本質についてよく考えられているというか、理解へと導く内容が一見遠回りなようでいて、そのくせとても魅力的で納得のいくものになっています。
種明かしをすると、法則や概念であれば「それがどのようにして発見されたか」「どのようにして考え出されたか」といったバックグラウンドの知識や情報が色々と紹介されています。こうすることで読み物として楽しいだけでなく、個々の知識がお互いに深いつながりを持ったものとなり、全体が体系的で膨大な知識のセットとして頭に残るというわけです。こうしたやり方は、理科に限らず様々な分野への興味を高め、知識のつながりを強める応用の利くものだと思います。
断片的な知識を必死に暗記したり、問題演習を繰り返して解法を身につけたり、大変な苦労の末に覚えたことでも、時間が経つとすぐに脳ミソからこぼれ落ちてしまう、というのを経験をしたことのある人ならきっと満足できるはず。たしかに値段は張りますが、普及版もあることですし、決して損はしないと思います。冒頭にも書きましたが、受験専用ではありませんので、理科に興味のある人が暇つぶしに眺めるだけでも十分満足できると思います。