偉大なツグマーコン人科学者エルヨグを父に持つ‘闇のスペシャリスト’オルウが語る公会議勢力の壮大な成り立ちの物語を描く大長編ＳＦスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第３６４巻。本巻の執筆者は、二話連続で破滅ＳＦの達人フランシスです。ローダンは大いなる黒いゼロを抜けたダッカルゾーンに点在する惑星群にグッキーら精鋭コマンドを送り、鱗肌生物ツグマーコン人の霊廟から異人を誘拐した。やがて‘闇のスペシャリスト’と自称する異人オルウはテラナーに驚くべき公会議の歴史を語り始める。本書はいきなり説明なしでツグマーコン人世界の物語に突入しますので最初はとっつき難いですが、読み進む内に興味深い物語に引き込まれます。
『闇のスペシャリスト』Ｈ．Ｇ．フランシス著：ツグマーコン人科学者エルヨグは惑星グロジョッコに迫る巨大なブラックホールに対し、宇宙船で脱出を図る住人達に反して惑星に残留する立場を取る。彼に創造されたレトルト培養種‘闇のスペシャリスト’のオルウら十二人の兄弟姉妹は権力者から迫害される父を助けようとするのだが・・・・。本編では長命のヒーロー、権力志向の強い独裁者、好戦的種族ラール人、グリーンの顔の謎の存在が繰り広げる物語に魅せられます。『千年眠る者』Ｈ．Ｇ．フランシス著：ツグマーコン人独裁者バスソクに強制され深層催眠に置かれたオルウらは推定５万年後の未来で目覚めさせられる。本編では遂に公会議の六種族、ツグマーコン人、ラール人、ヒュプトン、グライコ人、マスティベック人、ケロスカーらの結びつきの経緯が明らかになりますが、第七の種族だけを謎のままに残す所がお楽しみを先に延ばし興味を繋ぐ心憎い演出です。
本巻の翻訳者、五十嵐洋氏のあとがきは「夜の」をやめて何故「闇の」を選んだのかの愉快な訳語の解説です。まだまだ前途多難ながらも頼りになる心強い味方を得たローダンの次なる反撃の一手に期待しましょう。