強烈な西洋中心史観
★★☆☆☆
確かに、英語を勉強するにはよい教材かもしれない。複雑な構文はなく、英語は平易である。
大学入試を経験したくらいの人や、それを目指すくらいの人には読みやすい。(もちろん、辞書なしで読めるとはいわない。)
ただ、歴史を学ぶにはどうか。近現代史の記述は特にひどい。
いわゆる自虐史観といわれる日本の教科書の中で、もっとも自虐的なものを訳したのではないかと思われるくらいである。
なにより気になるのは露骨に西洋中心的な歴史観。
例えば、日本が途絶された資源を求めて、欧米が植民地として支配していたアジアへ侵攻するあたりの記述
Now Japan was seen as an enemy of international democracy and peace movements. Japan was also seen as trying to encroach on the Western assets created in Asia.(P90)
日韓併合の記述ではcolonizeと表現されているが、欧米が搾取したアジアについてはWestern assets created in Asiaなどと表現している。
南京事件については
Japanese army committed the massacre in Nanjing, killing several hundred thousand Chinese solders and citizens.(P89)
などと、数十万人という、当時の南京の人口を上回る人口の虐殺があったと嘯いてはばからない。
原爆の犠牲者はdied(死んだ)とされており、殺されたと表現されていないし、そもそも、時の内閣がポツダム宣言の受託に遅れたからだなどといっている。
戦後にアジアの諸国が独立したのはアメリカとイギリスが勝者としての義務を果たしたから(P97)などと「とんでも」な歴史観を披露している。
Even now, many Asian countries are nervous about the development of the Japanese military.(P97)
などと、中韓をmany Asianと称し、日本の軍事力にアジア諸国が懸念しているようなことを書いているが、何より地域に脅威をもたらしているのは中国であることは常識以外何者でもない。
空母も持たず、大陸間弾道ミサイルも持たない日本がいかに他国に脅威を与えよう。中国朝鮮以外にnervousになっている国があろうか。
中国の軍事力の倍々ゲームにたいしてnervous担っている国は、近隣諸国のすべてである。
上に上げたケースは一部に過ぎないが、日本の近代史を全否定しようとする特殊な見方である。英語の勉強にはなっても歴史の勉強にはならない。
それを知った上で、欧米人の自分か中心史観+日本の自虐史観を俯瞰しようとするなら、有益であろう。
短いが読み応えあり
★★★★☆
先史時代から安倍政権誕生までの日本の歴史を概略的に英語でまとめた本。
個人的には、「英語をがつがつ読みたい」という欲求と「歴史が苦手なので復習したい」という欲求を同時に満たしてくれたという、読んで良かった本でした。
さて、英語の文章ですが、語彙に関しては難しいものも少々出てくるものの、文体は極めて簡潔で明晰。ややこしい構文も少なく、比較的抵抗無く読めるのではないかと思います。目安として、センター試験や英検2級の長文問題がだいたい解ける人で、中学程度の日本史の基礎知識がある人なら、巻末の簡易辞書だけでかなり快適に読みすすめることができるでしょう。
内容に関しては、一人の人間が一貫した視点から書いている歴史なので、渇いた文体の教科書よりは面白いし、日本は外から見るとどういうふうに見える国なのか、という点を知るためにも参考になります。僕は歴史に関してはまるで素人なので、内容の公正さについては保証はできないけれど、おおむね偏りの少ない、比較的真っ当な記述ではないかと思われます。最近の日本の若者たちをかなり的確に観察していたりと、現代に至る歴史の流れというものを重視していることを窺わせる点にも好感が持てます。単なる歴史の概略書に留まらない読み応えがありました。
英語は得意だけど歴史は苦手とか、歴史は得意だけど英語は苦手という人にもお勧めです。