野生のいのししたち
★★★★☆
ウリ坊が笑っている。その愛らしさについ手をのばした本。
ウリ坊たちのあどけない、かわいい写真も満載ですが、読みすすむにつれ
六甲の山に生きる野生のいのししがものすごい迫力でせまってくる、そういう印象に
変わります。
野生のいのししたちのある種いさぎよさと、本能的なルールにしたがって生活する
すがたに、身のひきしまるような思いです。
たとえば、老いのししの姿に感傷的になった前川さんは、しかし、その老いさらばえた
体のなかに「最後の一瞬まで、自分の力だけで生きのびる」力強さを感じます。
それが、青空をバックになんともいい写真なんだなあ。
動物写真家は、とにかく時間的、身体的な忍耐が必要でしょう。
なにより、被写体へのシンパシーがそれをささえるのでしょう。
前川貴行さんの写真には、それが感じられて、こちらも心ゆさぶられます。