アメリカ法を学びたくなる本。易しく書かれているが、奥の深さも見せてくれる。
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楽しく、やさしく読めて、かつ、幅広いアメリカ法の要所要所の
ポイントを理解させてくれるすばらしい入門書です。
ボストン茶会事件から、オバマ大統領のスピーチまで
英国法に関しては、ノルマンディー公による征服から
ロス疑惑やハロウィーンでの日本人留学生射殺事件も
取り上げて、アメリカの司法制度や、契約法、不法行為法、憲法
に至る内容に関して、歴史を自由に飛び回りながら、
また、日本とアメリカ、欧州という地理的な対比も
織り交ぜて、解説されています。
体系的にまとまっているというスタイルではなくて、
ダイナミックに、アメリカ法を捉えている、と言って良いでしょう。
英米法の詳細に入る前に、まず、この本で、全体図を鳥瞰するには
最適な本だと思います。法律を学ぶ人だけでなくて、アメリカについて
学びたい人に、是非、お薦めします。
アメリカ法への愛着を感じる本
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アメリカ法について,易しく,かつ,分かりやすく書かれた本。
冒頭,万葉集について言及されていて,何のことかと思いましたが,研究者には,自分の専門分野が好きかどうか分からない人が多い中,その分野に愛着を持つ人から,名著が生まれるというエピソードを紹介。そこから,コモンロー,とりわけアメリカ法への著者の愛着を感じてもらうことを,密かに目指した本だということを匂わせています。
内容としては,著者の既存の本に基づいて書かれた部分がありますが,もっとすっきり,分かりやすい言葉で書かれていて,内容もアップデートされています。後ろに方には,アメリカの法制度一般についても説明されており,全体像が見渡せるようになっています。
所々に,日本の法律,法律家へのウィットある批判も書かれており,日本法を学ぶときに,相対的な物の見方を提供してくれるような気がします。具体的なケースを用いて,現代的な話題も盛り込まれており,読んでいて面白いと思えること,請け合いです。
学生時代に出会えていれば・・・
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学部学生時代、英米法、フランス法、ドイツ法のうちから必ず1科目は履修しなければ卒業できないことになっていたので英米法を受講していましたが、講義内容にもあまり興味も持てないまま、なぜ外国法を選択必修にしてまで学ばせる必要があるのかも今ひとつ理解できないまま、教科書に指定されていた田中英夫「英米法総論 上」、「英米法総論 下」(これら自体は学術書としては良い本だと思いますが)を漫然と読むだけに終わりました。
本書は、著者が既に公刊している「アメリカ契約法」や「アメリカ不法行為法」等からエッセンスを抽出し、最近のトピックス等にも言及しながら、読者の興味を惹き付けつつ極めて平易に英米法の基礎を幅広く説いており、軽妙な筆致もあたかも著者の講義を聴講しているかのような錯覚すら覚える臨場感を醸し出しています(ちなみに著者の(講義ではなく単発の)講演を聞いたことがありますが、聴講者を飽きさせない巧みな話術も著書に匹敵するほど素晴らしいものでした)。学生時代に本書が存在していれば、私にも英米法を学ぶ意味について多少は理解できていたかもしれません。
法学部等の学生として初めて英米法を学ぼうとする人はもちろん、ビジネスにおいてアメリカ法の素養を身につけておく必要のある人など幅広く薦められます。更に体系的な知識が必要な人には本書に引き続き前述の「アメリカ契約法」等の各論に入っていけばスムーズな理解が得られるでしょう。