ユニバーサル!
★★★★★
アルバン・ベルク四重奏団は、その名前とともに新ウイーン学派演奏の旗手として登場した。しかし、彼らの「方法論」は別のところにあったのではないか。むしろ、古典たるベートーヴェンの弦楽四重奏曲集を聴いて、その完璧な構成力に魅了されたリスナーは多いのではないかと思う。
さて、いわゆる「フランスもの」が中心のプログラムだが、弦楽四重奏曲に関して、ドイツ的とか、ウイーン風とか、プロ・フランスといった区分自体、あまり意味がないようにも思える。それはリスナーの好みの問題かも知れないが、本団の演奏を聴いていると、一種、オーケストラでは「シノーポリ流」ともいえる分析的な演奏であり、あらゆるフレーズの<有意>な意味をあまねく表現しうる方法論を彼らが希求しているのではないかと感じる。だからこそ、新ウイーン学派であろうと、フランスものであろうと、そこには演奏アプローチに本質的な違いはない。
4人のヴィルトオーソの名人芸が覇を競うといった、かつてのスタイルではなく、秀でた「技術者集団」が、楽曲を分析し最高の「ひとつの響き」に昇華するために徹底して統一感を追究するといった方法論をこの演奏を聴いていると実感する。その取り上げた演目が、たまたまフランスものであったというだけである、と思わせる。あえて言えば、このドビュッシーやラヴェルは、そもそも技巧的、分析的に書かれており、本団との相性は良いと言えるかも知れない。素晴らし曲だと驚くことからはじまり、それを紡ぎ出した本団の深い配慮と技術に脱帽するー何を演奏しても高レベルを保つユニバーサルさーそこにこそ本演奏の極意があるのではないか。