化学志望の高校生と大学生に
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三省堂の小事典シリーズの一つがリニューアルされた。「化学小事典」の初版は1964年に、第2版は1976年に、第3版は1983年に、第4版は1993年に刊行された。今回の新版「新化学小事典」(2009年)は第5版に相当する。初版から新版まで一貫して、旧東京教育大学(現筑波大学)の教官が監修と執筆を担当している。従来の版と異なる点は、ノーベル賞受賞者の人物紹介が加わったところにある。監修者の専門である放射化学、核化学、地球化学の領域においては、各項目に要領のよい説明がなされている。今回の改訂では、紙面が拡大しただけでなく、ページ数が442(第4版)から513(新版)にまで増大している。紙面の増加により、新規に700ほどの新項目が採録されている。環境、エネルギー、新技術、新材料の領域からは次の項目が追加されている。「オゾンホール」、「温室効果」、「サリン」、「高温超伝導体」、「燃料電池」、「光分解性プラスチック」、「光触媒」、「メタンハイドレート」、「カーボンナノチューブ」、「フラーレン」、「分子機械」。量子化学・物理化学の領域では、「フントの規則」、「フロンティア軌道理論」、「18電子則」などが新規に採択され、生化学・薬学の領域では、「免疫」、「免疫グロブリン」、「イブプロフェン」、「活性酸素」、「カテキン」など採択されている。従来は「高校学習・大学受験から一般教養まで」を守備範囲としていたが、今回の改訂により「化学初学者から一線の企業人まで必携」と路線が変更された。化学を志望する高校生(上級)から化学系学科の大学生(初年級)までに向いている。ロングセラーの良さをじっくりと味わうことができる。