マイルスは偉大だった
★★★★★
この本はウェイン・ショーターの半生を追ったものではあるが、ご存知の通り彼の精神世界の話もかなりのウェイトを占めている。某宗教が嫌いな人は読まない方がいいかな。
私にとっての恩寵は「サンクチュアリ」と題された章の始まり4ページだ。この本にはマイルス・デイヴィスの肉声が多数収められているが、この4ページは極めつけだ。私は眉間をカチ割られた。ここにはマイルスの残した啓示を感じ取ることができる。そして主役のウェインには悪いが、マイルスの帝王としての威厳を嫌というほど叩き込まれる。やはり、マイルスにはもう少し長生きして、ジャズ界、ひいては音楽界全体に渇を入れて欲しかった。
ジャズの歴史の断面が、当事者の言葉で淡々と語られているこの本は単に音楽ファンでなくとも楽しめる。所によっては深入りせずに、ウェインのプレイと同じ、その不思議な言語感覚を味わえる。