フィリップ・ロスは、センターを守る少年の胸の高鳴りを感じている。田舎道を運転中のリチャード・フォードはラジオから流れる野球中継に夢中だ。アミリ・バラカは、かつてニューアーク・イーグルスに大声援を送った自分を懐かしく思い出す。それははるか昔、まだジャッキー・ロビンソンが登場するずっと以前のことである。ベーブ・ルース、タイ・コブ、ハンク・アーロンら伝説的選手がチョイ役として登場するのもごあいきょうだ。何か国語もあやつる頭脳明晰なモー・バーグもさすがに「彼らのうち1人として打ち込むことはできなかった」。
アーネスト・タイヤーの『Casey at the Bat』やフランクリン・P.アダムスの『Baseball's Sad Lexicon』といった定番の詩はもちろん、メイ・スヴェンソン、ヨーゼフ・コミュニャカー、マーティン・エスパーダら最近の作品も収録。本書が伝える選手たちの神々しい姿は、読者に「神聖なるスポーツ=野球」という強烈なイメージを与える。ヘイウッド・ブラウン、デイモン・ラニアンらのコラム的作品も、名作家(ジョン・アップダイク、ゲイ・タリーズ、レッド・スミス)が描く名選手(それぞれテッド・ウィリアムス、ジョー・ディマジオ、レフティ・グローブ)の物語にぴたりとはまっている。(Book Description)