そして船は行く [DVD]
価格: ¥5,184
第一次世界大戦前夜の、ナポリから出航した豪華客船上を舞台にした群像劇。といってもそこはフェリーニ、ひと癖ふた癖どころか四癖も五癖もある面妖な人物ばかりがこれでもかと顔をシャシャリ出してきてくれる魔術的映画である。その面々とは、芸術家、オペラ歌手、貴族、亡命中の皇太子、漂流から救出された難民の群衆、などなどだ。もちろん彼らそれぞれが抱えた人生への呪詛や哀しみや享楽ぶりも大したものなのだが、やはり全員の「顔」そのものが実にいいのである。人はこういう顔をした生き物なんだと、惚れ惚れ見とれてしまうのである。
もうひとつ見逃してならないのは、全編ノーロケ、つまりオールセットで撮られているということ。出航の時の巨大な船体、難民がとぐろを巻く広大な最下層デッキ、船底で運ばれる不眠症のカバ、そしてラストで難破してみんなが飛び込む海までもがぴらぴらの作り物なのである。この「壮大なホラ話」的感覚にハマる人は深くハマるはず。(岡野宏文)