温泉・女・風土記
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眼が笑っている。その眼は心もち眇で、泊ってくれるわネ、と自信たっぷりに輝いていた。
(「脂粉」〜石川県・山中温泉〜 より)
■赤線温泉ガイドブック
古書店でも入手困難のレア作品、渡辺寛『温泉・女・風土記』を復刻!!
昭和30年、売春防止法の完全施行を目前に控え、いまだ全国各地には夥しいほどの赤線・青線(=女性街)が存在していた。一人の男が、自らの足で女性街に赴き、その実相をルポタージュした奇書中の奇書ともいうべき作品、『全国女性街ガイド』。
その『全国女性街ガイド』の作者で知られる渡辺寛が綴った、〝もう一つの女性街ガイド〟とも言うべき作品が『温泉・女・風土記』です。『全国女性街ガイド』でも垣間見られた温泉芸者への傾倒を押し進め、温泉歓楽街での芸者・女給・パンマたちとの交情をエッセイ調で綴った作品。
■収録箇所80超のボリューム
北海道から鹿児島(当時の沖縄はアメリカ領)まで、全83箇所もの温泉街を収録。『内外タイムス』、『サンケイ読物』、『100万人のよる』、『読物倶楽部』などに寄稿されたエッセイを収録し、単行化されたのが当作品です。
■赤線跡調査の資料としても
エッセイとしても佳作ながらも、登場する地名や情報から、赤線跡を探す手掛かりとしても有力な情報源に。例えば熊本県杖立温泉の稿には以下。
『盲腸を手術した跡だと称する子宮外妊娠手術の跡のあるその女は、実は芸者でなくて、【発電所のそば】にある【特飲の女】だと、申訳なさそうに語った。』
このことから、九州電力発電所のある通りに今も残るスナック街が、かつての赤線の名残りであると確定できます。
■温泉街マップ
当著に収録されている温泉街をプロットしたQRコード付き。エッセイ、地図、ストリートビューで立体的な読書体験。
■解説 関根虎洸
巻末解説は元プロボクサーという異色の経歴を持つカメラマン、関根虎洸氏。近年は旧街道沿いの飯盛旅籠や、旧植民地満州国大連に現存する逢坂町遊廓などを精力的に取材。