『読むなら読めば?』って感じ
★★★★☆
灰色の表紙と小さい字で書かれたタイトル。地味な装丁で、全く目立たない本。書店でも図書館でも『読んで、読んで、私を読んで』と大きな声で自分の存在をアピールする本と『読むなら読めば?』と素っ気ない調子で、ただ静かにそこにいるだけの本がある。この『客家(ハッカ)の女たち』は後者。黄色の文字で書かれたタイトルを見る。何の本なんだろうと背表紙の一番上をよく見ると更に小さい白い文字で『新しい台湾の文学』と書かれている。ここまで来て初めて、この本が台湾に関係したものであることが分かる。客家(ハッカ)と言えば中国の少数民族のひとつだけど台湾と何の関係があるんだろう−不思議に思って本を開いてみると、これまた表紙に負けず劣らず素っ気ない感じ。でも、その素っ気なさは冷たさとは違う。9つの短編小説の中には台湾という土地柄と客家(ハッカ)族の女性の生活や人間関係の持ち方などが淡々と描写されていて、例えば、凝りに凝った文章や写真、絵よりも、素朴で写実的なものを好むタイプのヒトなら、きっとこの本も気に入るだろうと思う。