【セブン-イレブンで24時間受取りOK・送料0円!】 著者/訳者名:コニー・ウィリス/著 大森望/編訳 出版社名:早川書房 シリーズ名:プラチナ・ファンタジイ 発行年月:2008年09月 関連キーワード:マ-ブル ア-チ ノ カゼ プラチナ フアンタジイ ま-ぶる あ-ち の かぜ ぷらちな ふあんたじい、 ハヤカワシヨボウ 6942 はやかわしよぼう 6942、 ハヤカワシヨボウ 6942 はやかわしよぼう 6942 毎年恒例の大会(カンファレンス)に参加するため、20年ぶりにロンドンを訪れたトムとキャスの夫妻。ロンドン地下鉄道をこよなく愛するトムは、旧友との再会を楽しみに地下鉄で大会会場へと向かうが、駅の構内で突然の爆風に襲われる。爆弾テロか毒ガスかと瞬間的に思うが、風は一瞬にしてやんでしまう。どうやら周囲の誰もこの風を感じなかったらしい。ようやく到着した会場では、病気や離婚といった話題ばかりを友人たちが口にしているのを耳にする。そして、ホテルに帰るため、地下鉄に戻ったトムは、ふ
大森ウィリス
★★★☆☆
コニー・ウィリスの短編作品を日本オリジナルで編んだもの。
編・訳は大森望。
ウィリスの小説の特徴として、人の話を聞かない登場人物と、
嫌味を感じない程度のペダントリーが上げられると思うが、
特に短編ではそれが際立っているように感じる。
登場人物も、主要男女を軸に展開されており、
正直なところ物語の区別がつきにくい。
この短編集はウィリス本人ではなく第三者によって編まれているから、
短編作家としてのウィリスについてどう評価したらいいか正直わからなかった。
ただ、ちょっと損をしてるような気がする。
初めてウィリスを読む人がこの本を手に取ったとしたら、
それはもしかしたら、すごーくすごーく損なことかもしれない。
余計な心配かもしれないけど。
ただ、この収録5編のうちのラスト「インサイダー疑惑」には度肝を抜かれた。
そもそもSFとは、ありえない出来事を描く「空想の文学」だ。
その空想の世界と、眉唾物とされるスピリチュアルものを合体させてしまった
この作品、出すところに出したら大議論になるのではないだろうか。
読者の立ち居地も試される作品、短編ながらかなりの手ごたえを感じた。
それから、もうこれはホントに毎回思うのだけど、大森さんの言葉使い、
特に女性言葉は、今回もすこぶる上手い。
翻訳モノも創作も含め、これまで読んできたあらゆる分野の文章で、
大森さんほどの表現力を持ったモノを読んだことがない。
世代や性格も書き分けるこの手腕、今回も冴えまくっている。
ウィリスを大森訳で読めるのは、日本人の特権と言っていいと思う。
SF的クリスマス
★★★★☆
装丁がとても可愛らしいハッピーな短篇集。
表題作、「マーブル・アーチの風」は、TUBEマップ片手にロンドンを歩いたことのある方にお薦め。
「白亜紀後期にて」「ニュースレター」のテンポの良さはコニー・ウィリスの名人芸。
「インサイダー疑惑」は、入れ子構造の具沢山。訳者・大森望氏のあとがき(後で読むこと)が大変役に立ちました。
クリスマスを題材にした近未来ラブ・コメディ「ひいらぎ飾ろう@クリスマス」は、必ず映画『眺めのいい部屋』を観てから読むこと。これぜったい。
全体にラブコメディが多く、とても読みやすかったです。眺めのいい部屋 完全版 スペシャル・エディション
素晴らしい
★★★★☆
印象深いのは「ニュースレター」だ。これはいわゆる侵略SF物なのだが、そこはウィリス、普通の侵略物にあるまじき意想外の展開になるからおもしろい。過去の侵略物では、「盗まれた街」にせよ「光る眼」にせよ「人形つかい」にせよ異常な事態が静かに進行し、主人公たちが気づいたときには時すでに遅し、という不気味な展開で恐怖を煽っているのだが本書では侵略によって善人が増えていくから話が違ってくる。主人公たちは侵略の事実を認識しながらも、これはこれでいいのではないかなどと考える始末。ゆえに、この作品は侵略物であるにも関わらずコメディとして機能しているのである。この作品と次の「ひいらぎ飾ろう@クリスマス」は、どちらもクリスマス・ストーリーとしても描かれており、その味わいはディズニーのラブコメのような上質のユーモアとときめきが内包されていて、これはこれで素敵な仕上がりだ。本来ぼくは、こういう類の話はあまり読まないのだが、この人だけは別格である。心底か
ら愉しんだ。ここで、ひとつコニー・ウィリス作品の印象を語ってみようと思うのだが、彼女の描く話はSFという体裁のメロドラマだといっていいのではないだろうか。その腕前は、コメディタッチの作品で存分に味わえる。本書の中では上記の二作とラストの「インサイダー疑惑」がそう。どれも本質はメロドラマであって、SF的な解釈はサブ・エフェクトなのである。だから、SFに疎い読者でもすんなり物語りに入っていける。反対にシリアスタッチの作品は、SF効果がより前面に押し出されてくる。本書では表題作がそれに当たる。本書の「マーブル・アーチの風」はロンドン地下鉄道が主な舞台となる。主人公であるトムは妻を伴い、毎年恒例のカンファレンスに参加するためにロンドンを訪れているのだが、地下鉄構内で突然の爆風に見舞われる。火薬の匂いや血の匂いの混じったその強烈な風は、しかし他の人には感じられておらず、どうやら自分だけが感じているようなのだ。いったいこの風はなんなのか?他の地下鉄駅でも同じ目にあったトムは、風の謎を解明すべく懸命に地下鉄を巡っていくのだが、そこには思いもよらない真実が隠されていたのである。
著者の優しさが滲み出るほのぼのとした物語を安心してお楽しみ下さいね。
★★★★☆
傑作長編「航路」で大ブレイクを果たした現代アメリカSF文学界の女王ウィリスの最新中短編5編を収めた日本オリジナル傑作集です。本書に収められた作品の特長は、ユーモラスでコメディ・タッチの明るい作風の物からシリアスな人生の悲哀を感じさせる重めの作風の物まで幅広く網羅されていて、その殆どがシャイな男女の淡い愛情に彩られ、必ず希望に満ちた余韻を残すラストになっています。それから全5編の作品の時代背景は一つを除いて全て現代で、奇異なSFアイテムも少なく理解し易いですので、すんなり作品世界に溶け込めるでしょう。作者は侵略SF映画やシェイクスピアの戯曲やロンドンの地下鉄、実在の興味深い批評家を作品のネタに取り込み、細部に徹底的にこだわる職人気質のサービス精神を発揮して読者を大いに楽しませてくれています。
『白亜紀後期にて』:大学教授の講義に上の空の学生達のノートの文字や「っていうか、ぶっちゃけ、みたいな」という現代若者言葉が可笑しいです。『ニュースレター』:クリスマスを控えて街の人々が皆善人になって行くという侵略SFネタです。ヒロイン・ナンが恋と自分の幸せよりも人類と正義を選択する潔さがちょっぴり切ないです。『ひいらぎ飾ろう@クリスマス』:近未来を舞台にクリスマス・プランナーを職業にするヒロインの恋と冒険を描く爆笑コメディです。大胆に例えると吉本新喜劇的なノリも感じるお芝居感覚が味わえます。『マーブル・アーチの風』:夫婦で二十年ぶりに訪れた思い出の地ロンドンは次第に苦い物となって行く。夫のトムは地下鉄で異様な風を感じて路線を乗り継ぎ、奇妙な謎を追いかける。老いのもたらす問題に屈せず立ち向かう男の姿が感動的です。
本書の各編にはびっくりするようなオチはありませんが、著者の優しさが滲み出るほのぼのとした味わいが身上のハイ・クオリティーな物語を安心してお楽しみ頂きたいと思います。