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又五郎の春秋 (中公文庫)

価格: ¥680
カテゴリ: 文庫
ブランド: 中央公論新社
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不思議な名著である  ★★★★☆
大正時代からの歌舞伎俳優で先ごろ物故した中村又五郎について、もう20年近く前に死去した池波が書いたものなので、奇妙な時間のずれを感じる本である。
又五郎は播磨屋である。しかし門閥ではないから、終生脇役だった。播磨屋といえば吉右衛門なので、大向うからは「又播磨」と声がかかった。
 池波が、大看板ではなくて又五郎を選び出したことが面白い。又五郎が高齢で死去した今、昭和歌舞伎を偲ぶための一冊である。
歌舞伎でも又五郎でもなく ★★★★★
 テーマは「教育」だ。断言する。
 池波正太郎にしては珍しく個人に的を絞ったエッセイ。歌舞伎役者である又五郎の、学生たちに対する厳しさ優しさが印象的である。日本は敗戦と同時に芯の部分を骨抜きにされてしまい、教師たちは持つべき「魂」を見失ってしまった。マニュアルにより育てられた近年の親は誤った「個性」「自由」「平等」を電飾ネオンの如く振りかざしている。真の才能は厳しい教育でしか培われないのだということを忘れてしまっている。サラリーマン(公務員含む)としての出世が「まともな人生」で、芸道を極めることは文字どおり「かぶき者」なのだと、歪んだ中流意識が蔓延してしまっている。
 模範解答に自分を合わせることに汲々とし、世間様の顔色を伺うことにせいいっぱいで、自分で問題点を見つけ出して困難を乗り越える胆力の無い若者たちに、日本の将来を任せられるだろうか? そして、そうなった責任は、「経済発展」の名の下に周囲を見ず、面倒なこと厄介なことは考えず、競馬馬のごとく走り続けてしまった世代にある。