グルベローヴァによる第4楽章は決定的。
★★★★☆
これはシノーポリの指揮より、第4楽章のエディタ・グルベローヴァの歌唱がうまい。
第4楽章は下記の歌唱を聴き比べた。
レリ・グリスト(バーンスタイン/60年)
エディット・マティス(バーンスタイン/72年/DVD)
ルチア・ポップ(テンシュテット/82年)
ドロテア・レシュマン(ハーディング/04年)
マティスは清楚すぎる。マーラー第4番第4楽章の気味の悪い歌詞は、彼女には合ってない気がする。
テンシュテット盤のルチア・ポップは第1,2節が若干不安定に聞こえる。ひどいキズはないものの魅力もない。たまたま同じCDに入っていたR.シュトラウスの「四つの最後の歌」(82年)が圧倒的でうますぎるので、マーラーのほうは元気なく調子悪いように聞こえる。
グリストは持ち前の明るい声の《少年》らしさは良いが、雄弁ではない。その点、物足りず、悪く言えば舌足らず。
レシュマンは明らかに力不足。
上記に対し、グルベローヴァのうまさは、
第1行の"himmlischen"のメリスマ。
第3,4行目で"Getummel"と"Himmel"で韻を踏んでるが"Himmel"のアクセントがうまい。
第3節「洗礼者ヨハネ様が子羊を放す」以下の表情が良い。
第4節「Gut' Apfel, gut' Birn' und gut' Trauben,」以下テンポが速くなるが、適切な語り口。もう少しドイツ語をはっきり聞こえるように歌った方がいいと思ったが、ドイツ語ネイティヴの人には、ちゃんと聞こえるでだろう。問題なし。
「Sankt Ursula selbst dazu lacht!」の"dazu"の"zu"の下降は、バーンスタイン盤(87年)のボーイソプラノでは、少年らしく可愛かったが、やはり大人の技巧のほうが断然いい。
グルベローヴァの歌唱は、美声、気品、貫禄でこの気味の悪い歌を「圧倒」してしまったように思う。
録音:1991年2月