学説の対立を詳説
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判例の立場も紹介されていますが、どちらかといえば学説の対立がより詳細に述べられています。
判例重視を打ち出している「新司」の傾向に歩調を合わせたためか、他の比較的新しい基本書類は学説の対立にはあまり立ち入らず、判例理論の詳述に注力し始めている感があります。
しかし、たとえば「転用物訴権」のように、判例の変遷に学説の影響が色濃く反映していると見られる事例もあり、判例理論の理解のためにも、学説の把握は決しておろそかにできません。
本書は、判例・対立する各学説の解説は勿論のこと、著者の立場(あるいは支持学説)も明示されています。さらに、利害関係人の相関図などを適宜挿入。重要学説の検証や、込み入った概念などは「かこみ」を設けて別途解説するなど、読者の理解を助ける手間を惜しまない姿勢も嬉しい。
判例中心の書が今後も増え続けると容易に想像がつく現状を考えると、近江本は希少な存在として輝いてくるのかもしれません。