演奏法はカラヤンが1970年代にベルリンで修めた“マッサージ”スタイルの典型で、“マッサージ”スタイルとは、よく知られているように、アンドルー・ポーターが演奏の成果を批評して神戸牛にたとえたものである。筋骨隆々の下にはある種の柔らかさがあるが、大部分においてカラヤンは例の強烈な統率力を発揮し、抒情的な要素と動的な要素のバランスを維持している。
これらのレコーディングを行ったときピークを迎えていたベルリン・フィルハーモニー・オーケストラは、まさに驚きである。その演奏が熱情的であったり、あるいは自発的であったりすることはほとんどないとはいえ、そのサウンドは豪奢で、生気に富み、気分を浮き立たせるほど豊かである。
カラヤンは終始、ビッグ・オーケストラを使い続ける。交響曲第1番でもそうで、そのため音が、重々しくはないが、大きく聞こえる(第4楽章冒頭でのヴァイオリン群のきびきびした音階は、心地よいほど軽やかである)。オーケストラの滑らかさに加えて、カラヤンの解釈もエネルギーが高レベルにある点で注目に値する。これはとくに第8番について言え、この全集でもっとも成功している作品の1つである第8番は、第7番との関連をはっきり示すやり方で演奏されている。
バランスについては、評価は「非常によい」から「傑出した」まであるが(第4番、8番、9番)、超越的なところまで近づくことはごくまれである。ベルリン・フィルハーモニーで行われたレコーディングではクローズマイクが使われ、かなり高レベルで原盤ディスクが作られ、サウンドは見事なほど堅牢である。(Ted Libbey, Amazon.com)