アバドの伸縮自在の律動に驚嘆
★★★★★
たたみ込むような快速なパッセージのあとにゆったりとした曲調に変わる、次には加速度をつけて音楽が再度推進される。自在なリズムの伸縮はアバドならではだろう。交響曲のように堅牢な構造を持つ楽曲は即興性にあふれたアプローチは、かえってマイナスに作用することがあるが、こうした小曲やオペラでは聞き手の情動を瞬時に揺さぶることができる。アバドの真骨頂。ウイーン・フィルのきらびやかな音色も良い。
1996年ベルリンフィルのニューヨーク公演でアバド指揮のブラームスを聞いた。その時のアンコール曲がハンガリー舞曲2曲であった。聴衆は総立ちで「ブラボー」の声は鳴りやまなかった。そのとき覚えた戦慄を、オケは違うとはいえ、今でもこのCDを聴くと思い出す。