そのバーンスタインがワルター・ベリー、クリスタ・ルードヴィッヒ、フィッシャーディースカウの3人とピアノ伴奏で競演したのがこのCD。
純然たるピアニストの弾く伴奏とは違い、バーンスタインは完全にオーケストラの再現を試みている。
そこに再現されているのは低弦がうなり、ホルンが咆哮し、トランペットが悲劇を伝えるマーラーの世界そのもの。ここで鳴っているのはもはやピアノではない。
リュッケルト、若き日の歌、さすらう若人ではディースカウのテキストのすべてを理解した上での細かい声のコントロメ?とあいまって、ピアノ伴奏であるハンディなどまったく感じさせず、スケール感もまったく衰えることなくマーラーの世界を再現している。
その音楽的な深さは並み居るオケ伴奏の録音を差し置いてこの録音を第一として差し支えないだろう。
角笛では当時夫妻だったベリーとルードヴィッヒがディースカウのような細密な表現ではないものの、極めて素直にウィットに富んだこの曲集の特徴をよく出している。
角笛はウィーンでのライブだが、ほぼ同時期に録音されたNYフィルでのオケ伴奏のもの(スタジオ録音)よりこちらの方が良いような気がする。
国内版のみでしかも2枚組のため価格がやや高いのが残念だがそれだけの価値は充分にあるCDだと思う。