ごめんなさい…
★★★★★
発売当初、前二作のような「刺激」が感じられずにレンタルしてパスしてしまった本作。
移籍第二弾“DOROTHY”を入手した際に、何故だかもう一度聞きたくなり再びレンタルしてみて、以前パスしてしまったことを激しく後悔した。
シングルカットされたのは“castle imitation”しかないが、アレンジも異なっており、きちんとアルバムの一部に溶け込んでいる。
改めて聞き直して素晴らしいと感じたのはアルバム全体のトータル感。この傾向は“LAS VEGAS”以降顕著になっていくが、刺激的な部分が薄れた代わりに曲を飛ばさずに一気に聴きたいという衝動に駆られる。
本作以降、“LAS VEGAS”までのインターバルが長かったせいかもしれないが、鬼束ちひろは一曲一曲(つまりシングル)で勝負するアーチストから、アルバムトータルでも勝負出来るアーチストに成長していたことに、恥ずかしながらやっと気づいた次第。
初期二作はシングルの寄せ集めに近く(悪い意味ではない。むしろ、インソムニアはベスト版的で愛聴版である)、“LAS VEGAS”はアルバムで勝負、“DOROTHY”はその中間を行っている。その意味で“DOROTHY”は一つの完成形かもしれない。
ただ、その流れを作った過渡期の作品がこの“SUGAR HIGH”であることは間違いない。今まで敬遠してきてしまい、ごめんなさい、鬼束ちひろ。そして“SUGAR HIGH”。
とっても濃厚な3rd
★★★★★
全曲がアルバムオリジナル曲という3rdです。初期の3作品の中では一番「濃ゆい」一枚かもしれません。
今作は、音のバラエティが広がった印象を持った前作「This Armor」とは打って変わって、ピアノや最小限のストリングス等音数が少なくダウナーな曲が多いです。しかし、音が少ない分鬼束さんの生々しく、迫力ある歌声がより際立っている感じがします。また、孤独感や激情がより強くほとばしっている歌詞も、歌声に乗ってダイレクトに伝わります。 それまでになく激しいピアノロックの「Tigar In My Love」や、荘厳な空気で「生きて」と繰り返す「Castle Imitation」、包み込むような優しさを感じる「King of solitude」等重みがある楽曲群が楽しめます。 ラストの「BORDERLINE」はなんとも説明し難い、とにかく聴いてもらいたい1曲です。独特のシャウトと崩れ落ちるようなピアノでラストを迎える、スゴい圧巻の曲です。
9曲という曲数を感じさせない濃厚な作品です。鬼束さんの最初の1枚には向かないかもしれませんが、ハマッたら抜け出せない位の作品だと思います。是非聴いてみて下さい。
最高の完成度だと思います
★★★★★
デビュー当初から聴いて、どのアルバムもかなりのリピート率で聴き込んで来ましたが、
これほどエンドレスにリピートしたアルバムは他のアーティストを含めても
覚えがありません。
かつてドキュメンタリー番組で彼女も語っていましたが、
「歌詞が降りてくる」
という表現がピッタリだと思います。
日本語として会話の中には組み込めない難解な言葉の羅列は、
考えるよりも感じる他ないのではないでしょうか。
1:NOT YOUR GOD
彼女が相当昔に作った曲だそうですね。
私は貴方の神なんかじゃない。そのまんまです。
神格化されることを嫌い、ありのままの自分を見て欲しい、自分で居たい、と言う
叫びを低音に乗せて淡々と歌い上げるオープニングに鳥肌が立ちます。
2:声
この曲を聴くと「後悔」と言う言葉が浮かびます。
3:Rebel Luck
どんなに辛くても痛くても、進む事だけは出来る。進もうとする意志を持つ事が出来る。
そんなストーリーが浮かびました。
4:Tiger in my Love
ロックです。誰がなんと言おうがコレはロックです。
ピアノとシャウトのシンプルな叫びです。
5:Castle imitation
このアルバム全体を通して感じますが、傷つきながらも前に進もうとする
血まみれの強い意志の様なものを最も如実に表現した曲に感じます。
この曲が私の中では彼女の最も代表的な曲に位置してしまいました。
6:漂流の羽根
頼りなく彷徨う様な曲ですが、ひたすら繰り返す何かを感じて
逆にホッとしてしまう変な曲に感じます。
現状維持の安心感とでも云いますか。
7:砂の盾
とても頼りなく、儚さを感じます。
自分の立ち位置にどれ程の不安を感じているのでしょうか。
そう云った空虚感を吐き出そうとしているのでしょうか。
8:King of Solitude
「孤独の王様」ですか。
この曲がアルバム、いえ、彼女の発表した曲の中心に位置している気がしてなりません。
「もっと 側へ」
これ以上の優しい言葉があるのでしょうか。
孤独を知るが故の優しい、包み込む言葉の数々。
この曲以上の優しい曲には未だ出会えていません。
9:BORDERLINE
そしてなんでしょうか、この緊張感を以て終わらせる〆方。
人間は様々な矛盾を抱える事で、実に多面的な見せ方が出来るものですが、
彼女のそれはアーティストとしては余りに鋭利で、折れそうです。
一つのアルバムで実に大きな振り幅を見せてくれました。
白黒の激情と低温感
★★★★☆
サードアルバムは、何と全曲新曲。
ジャケットや中のカードも全て白黒、白髪のちっひーが睨みをきかせる写真は、それまでのナチュラルなイメージを見事に覆し、それでいて負のパワー全開の鬼束ワールドらしい、素晴らしいものでした。
メロディーや声、全体に低温感を感じさせるアルバムです。バンドアレンジの「Tiger in my Love」で「私を土足で荒らしても」と激しく黒い世界を歌った後で、「Castle・imitation」で「生きて」とひたすら繰り返し、ひたむきな慈愛を感じさせるなど、振れ幅の広さも好き。
彼女の歌は良い意味で流行モノではないので、今からでも十分聴き応えあります。
鬼束ファンは勿論、洋楽でエモーショナルなものが好きな方にもゼヒオススメです。
慈愛と凶暴性
★★★★★
完成度としても、個人的な嗜好としても、この作品が一番だと思います
鬼束版白雪姫らしいM1「NOT YOUR GOD」で静かに幕を開ければ
M2「声」M3「Rebel Luck」という、彼女の持つ慈愛、温かさ、優しさ、救いに包まれる
特にM3の"いくら階段を踏み外しても〜"の部分がいいです
そして新境地M4「Tiger in my Love」では、ベース・ドラム・ピアノのみによる
低音が響く本格ロック(もっとこういった作風も聴きたかったなあ)
M5「Castle・imitation」は勇ましい、荘厳なイメージ
"有害な正しさ"など詞の世界にも感服してしまいました
ラストを飾るM9「BORDERLINE」は淡々と始まるものの、
次第にストリングスが盛り上がりをみせ、歌唱、フェイク、シャウト、
その狂気とも言える迫力に圧倒されてしまいました
慈愛と凶暴性という、相反するようでいて、誰しもが共存する感情を
見事に体現化している素晴らしい一枚です