Stepping Out
価格: ¥1,672
ここ数年、ダイアナ・クラールはシンガーとしてピアニストとして両方に圧倒的な才能を発揮し、ジャズ界に新風を吹きこんできた。最近のアルバムからは、クラールが着実に成熟していることがうかがえる。だが、1992年の本デビュー作は、カナダのブリテイッシュ・コロンビア州ナナイモ生まれのこのアーティストが、初めからその素質を持ち合わせていたことを教えてくれる。20代半ばのクラールは、ボーカルに誠実さと精妙さと説得力をこめて歌い、伴奏者として第一級の即興演奏者として、ボーカルのフレーズとフレーズのあいだに見事な余韻を加えて堂々とピアノを弾いている。実際、クラールがその天性の才能を織りまぜ、楽曲に驚くほどの完成度をもたらしているのには舌を巻くばかりだ。ベースの名手ジョン・クレイトンと超一流のドラマー、ジェフ・ハミルトンとともに、クラールは素晴らしいナンバーを次から次へと繰りだす。「This Can't Be Love」はリスナーが思わず足を踏み鳴らしそうになるナンバーの典型だ。また、素敵なしっかりとしたボーカルをサラ・ヴォーンさながらにフレーズに滑りこませ、ピアノをオスカー・ピーターソンとジーン・ハリスを合わせたようなスタイルでプレイする。そうすることで、彼女の揺るぎないフィーリングに裏打ちされた素敵なモチーフを、リスナーの耳にすっと忍びこませる。「As Long as I Live」ではまた別の才能を見せ、スタンダード・ナンバーをノンストップのグルーブで歌いスウィングさせている。「Straighten Up and Fly Right」ではテンポをさらに落としブルース色の濃いボーカルを聴かせ、「I'm Just a Lucky So and So」にも同じ官能を漂わせる。バラードの名曲「Body and Soul」では彼女の親しげなボーカルと優しいタッチのピアノが耳にできる。まさに本作は鮮烈なアーティストの鮮烈なデビュー作と言える。(Zan Stewart, Amazon.co.uk)