このシリーズは自信を持ってオススメします
★★★★★
シリーズを通しての退廃的な、陰鬱な雰囲気がお気に入りです。
救いがないわけではないのですが、どこか悲しい匂いがするこの作品。
第一巻の衝撃もすごかったですが
この巻も、謎が謎を呼ぶ展開、先の読めない展開、そしてそれらが最後に繋がっていく作りに、
興奮を抑えつつページを繰っていました。
内容的にはミレポックと神溺教団の一人に焦点を当てつつ、ラスコール=オセロの謎に迫ります。
また、教団の目的である「天国」についての解説もありますので
物語の全体像がはっきりとして、ある種すっきりします。
ハミュッツの活躍はありませんが、冒頭でもわかるように
ハミュッツ、マットアラストがどこまで知っているのかが気になるところですね。
俗に言う「萌え」という言葉には程遠いですが、挿絵も雰囲気に合っていると思います。
本当にストーリーで勝負できる、完成度の高い作品です。
秘密の上に成り立つ秩序
★★★★☆
世界観の外枠がようやく見えてきた。そんな気がする。
伝説的「本」屋、ラスコール・オセロ。その存在が敵対組織、神溺教団の秘密を暴く鍵であるとにらんだ武装司書ミレポックは、館長代理ハミュッツの決定にそむき、休暇をとってその正体を探ることにする。武装司書にとっても、教団にとっても禁忌であるラスコールが守る秘密とは…
真人とは何か、天国とは何か、バントーラ図書館上層部と教団の関係は、そもそもなぜ「本」が作られるのか?そんな謎の一端が読者に対して開示される一方で、ラスコールを追うミレポックとアルメ、二人の少女が自分自身を理解していく…
幸せの実現を他人に託して生きるもの、幸せに至ることによって幸せを無くしたもの、幸せを公平に分配しようとするもの。この世界では幸せが「本」に仮託されている。
二人の少女の物語は一応の終結を見たが、代わりに物語を閉じさせる謎が提示された。この謎が背負っているものは世界の秩序か、それとも悪夢なのか。