欧米かぶれの金持ち女の物語
★★☆☆☆
欧米かぶれは、昔の日本では”西洋かぶれ”といって、庶民の間では
揶揄されたものである。金持ちの留学生や帰国子女に多い。こやつら
は何かとつけては「欧米で○○なのに、それに比べて日本は・・・」と
言って日本批判をする。
で、このマルジという女はイラン版欧米かぶれである。欧米人には受け
がよかろう。だが、イランで頑張るイラン人女性からみたらどうなのだ
ろうか。革命から戦争の間の、激動のイランから逃げて、欧米好みの
イラン像を描いてみせて欧米の寵児になっただけの人なのではないか。
イランの女性は思われているほど弱い存在ではない。欧米人や日本人な
ど、近代西洋の価値観を絶対視する人々が言うほど男性に隷属する哀れ
な存在とは思っていないし、イスラームが男女差別の原因とも思っては
いないらしい。
むしろ、男性がイスラームを正しく理解せず、自分たちの都合のいいよ
うに解釈してきたと考えている人も多い。コーランを読みこなせるエリー
トの女性ほどそうである。そして、彼女らのやり方で今のイランを変え
ていこうと努力している。
イランの大学、それも理科系や医学部においても半数近くあるいはそれ
以上が女性である。
自らの努力で現状を変革しようとしている彼女らにすれば、男性の好奇
の目を浴び、それによって”イイ男”の庇護を得るのに熱心な欧米の女
性のほうこそ、精神的には男性に隷属しているとすら考える人だっている。
この映画の話でマルジが感じたイランは事実だろう。だが、彼女のよう
な裕福で天真爛漫さが許される環境に皆がいるわけではない。
お金持ちの日本人が感じる日本と、平民がが感じる日本は全然違う。そ
れは正社員にとってよい会社が派遣社員にとって良い会社とは限らない
のと同じことである。
この場面はちょっと余計
★★★★☆
カナダやヨーロッパのアートアニメのスタイルで政治的な題材を扱っている、という感じで、
映像に見とれながらイランの政情に詳しくなれるのがいいですね。
ただ、主人公の祖母が映画館で、「ゴジラ」と「キングコング」をごっちゃにして
日本の悪口を言う場面には、へこみました。
なんでそこでそういうカタチで日本を出すかなあ・・・
田中正造はどこに出てくるんですか?
★★★☆☆
おっしゃれにしないと誰も知ることはなかった、どこにでもあるマルジの半生。半生ってほどでもないし。だからさ、フジの女子アナにでも語らせとけば。あーゴメン黒いのでちゃった。
で、マルジという個人を通してイラン激動の歴史を垣間見るわけです。見ちゃった気になるわけです。で、この作品は、この表現はすっごく褒められちゃうわけです。芸能界あげて。なんでかってそりゃあ、ソフトだから、無害だから。
何でマルジかなー、と強く強く思う。
消費社会でも個人の時代でも何でもいいけど、口コミにするにも批評家やメディアに取り上げられるにも、おっしゃれにここまで光があたった時代があっただろうか?アニメって見やすいよね。マルジって身近だよね。イランって不幸だよね。フランスっておっしゃれだよね。
田中正造や、阿波根昌鴻は、不遇だってことなのか。マジで誰かおっしゃれにしてくれと思う反面、絶対おっしゃれに伝えてほしくないことがある。
個人の記憶の、あくまで背景が歴史だとしたら、個人が全くコミットしない歴史って何なのかって思うでしょう?それなら、選択された記憶の集積が歴史だとしたら、選ぶのは権力か、メディアか、それともおっしゃれか。これまでになくおっしゃれが力を持った今、目新しさや瞬間的な感情で人間や時代が動いてゆくのを僕やあなたはもう十分見てきたでしょう。で、僕はもう飽きたわけです。ああこれか、これが言いたかったんだ。
マルジを見て、この映画が忘れられない記憶になる少女だっているのだから、どんなものにも影響力があるという。そんな影響力に価値を認めていけるほど、暇でも寛容でもない。30年生きた人間としてレビューすることしかできんわ。
おもしろかった、って簡単に言うじゃないですか。じゃあこの映画で言う「公正明大」ってことについて、まともに考えたことがあるのかよ、と言いたい。てか明日にはイラン現代史とかどうでもええんやろと、その場でググってわかったようなこと書きやがって。
あーゴメン自分に。自分にね。ハイハイ糞レビューだよ。
イラン版ちびまる子ちゃん?
★★★★☆
とあるイラン人女性の視点から見たイラン社会と戦争などの自伝的コミックの映画版。
映画では時間の関係上省かれている部分がかなりありますので、興味のある方は原作とセットでご覧になることをおすすめします。
もちろん映画だけでも話がつながらないわけではないのですが…
本編にも出てきますが、この作者は当時国民の半数は字が読めない国で育ったにも関わらず、幼少期から様々な知識を吸収する機会にめぐまれ、両親も政府のプロパガンダにも操作されず、国営放送はとりあえず疑ってかかる人たち。
それゆえ社会を皮肉ったり、冷静にものを見ることができるのでしょう。
決して一般的なイラン人ではないと思います。
しかしストーリー展開はおもしろい。
かなりヘビーな内容ですが、白黒のイラストで展開していくので目をそらさず見ることができます。
何かのインタビューで作者が語っていた、
「実写だとエキゾチック、酷い場合は第三世界の話で終わってしまうが、単純なイラストにすることによって誰にでも関わりあるものにできる」
という狙いは当たっているようです。
レトロな感じ
★★★★★
もともとはテーマに惹かれて映画を観に行きましたが、今までに見たことのないレトロな感じのアニメーションと切なくそれでいてどことなく温かいこの作品のなんとも言えない懐かしさが忘れられず漫画とDVDを購入しました。内容はと言えば主人公マルジの半生を描いたものです。イランの内政や戦時下の状況など、面白いといえば面白いのですが、何とも言えないレトロな感じがこの作品の魅力だと思います。あとこの人の家は信じられないほどの金持ちです。なのであまりリアルな戦時体験ではないです。