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「格差」の戦後史--階級社会 日本の履歴書 (河出ブックス)

価格: ¥1,260
カテゴリ: 単行本(ソフトカバー)
ブランド: 河出書房新社
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著者の指差す先に「階級」など本当に存在しているのか、と私は疑問に思う ★☆☆☆☆
 某全国紙書評欄で2度にわたり取り上げられていたので(09/12/20、12/27)、ずっと気になっていたのだが、ようやく読んだ。で、これまで著者の本を読んだときと大体同じことを思った。とにかく私としては「階級」という用語の導入方法が気に入らない。ある意味で全くナンセンスな本だとさえ思う。
 例えば本書の副題は「階級社会 日本の履歴書」となっている。この著者には他にも『階級社会 日本』という著書があって、これはまだ分からないでもないのだが、本書副題の1マス空は意味不明。「〈階級社会 日本〉の履歴書」なのか? とにかく「階級社会」という用語の位置づけが曖昧で、実はこの曖昧さは著者の一連の著作のタイトルを見ても感じられる。『新しい階級社会 新しい階級闘争』(ここにも1マス空!)の副題には「『格差』ではすまされない現実」とあるのに、版元の要請なのか本書をはじめとして「格差」を前面に打ち出した本が多いし、何となく腰の定まらない印象が拭えない。
 本書末尾で「資本家階級−労働者階級という両極分解図式が政治的ならば、一億総中流という図式もやはり政治的である。私が用いた四階級図式による分析も、さらには単純な職業分類にもとづく格差の分析すら、政治的な性格を免れない」(p213)と大見得切っているが、私にはこの主張は受け入れられない。ただの言い逃れだと思う。
 「階級」「搾取」という歴史的文脈を背負った語を用いる以上、そこに「特殊な含意」が生じることは避けられない。そしてこの著者の一連の著作タイトルにも感じられる両義性は、歴史的文脈についての総括を曖昧に回避しつつ読者を「特殊な含意」へと繋ぎとめる。
 あと、いつもながらのサブカルチャーへの言及なのだが、いつもながらセンスがない。吉永小百合なんてどーでもいいじゃないか!
「階級」で社会を斬ると ★★★★★
 興味を持って読み始めてみたものの、専門知識に乏しい自分には難しそうなので、「戦後」はとばして90年代阪神大震災の項から読んでみた。
 震災の被害にも格差があり、高齢・女性、低所得者に被害が集中したというあたり興味深かったが、図表の「新中間階級」って何??わからないし、なんとか読みとおせそうな気がしてきたので改めて最初から読み始めた。
 この本では時代を象徴するエピソード(ニュース:70年代だと三菱重工ビル爆破事件とか)からその時代の格差を語っていて、とっつきやすくなっている。(最初のエピソードは階級構造そのものを説明するための、モーツァルトのフィガロの結婚。)

 近年格差社会と騒がれるようになって、子どもの頃聞かされていた一億総中流はどうなったの?と思っていたが、格差が縮小していたのは意外ともっとずっと昔のことで、一億総中流と言われていたころにはとっくに格差は拡大していたらしい。

 笑ったのは「階級カテゴリーの構成」という図表で、「新中間階級」が雇用者のうち専門職・管理職などのことだったとわかったのだが、正規雇用・事務職の「男性は新中間階級、女性は労働者階級」というところ。
 
 同じ職種・雇用形態なのに男女で階級が違う!?
 
 考えてみれば現実はそのとおり。このように男女間の格差がそもそもあるので母子家庭は必ず貧しく、低収入の家庭で妻が働きに出ても貧困が解消されない(他国では解消される)という、日本独自の問題が生まれているそう。
 「階級」、聞き慣れなかった(自分の階級が何か、と考えたことがある?)が、「階級」という言葉を使った分析がとても新鮮だった。

 
実証的な格差分析です ★★★★★
資本家・労働者・新&旧中間層の4階級を設定して、戦前期を含む
戦後日本の、所得分配と階級移行(固定か?)の問題を、実証的に
分析しています。
工夫されたデータがたくさんあり、日本社会の状態が、客観的に表示
されています。国際比較では、わが国の所得分配の不平等が、著しい
ことと、貧困率の高いことが驚ろかされます。
また、所得や失業は、経済カテゴリーですが、本書ではこれらが景気循
環に応じて変化するだけでなく、税制や、雇用政策によって、いかに大
きく影響されるがが、如実に示されています。
こうしてみると、「格差」は、中立的カテゴリーではなく、やはり、階級
と階級の闘いの産物だということがわかりますね。

ところで、専門的な技能・資格や組織内の高い地位が、搾取の基盤とな
り、したがって、専門職・管理職の新中間階級は、<搾取者>になっている
(p.197)という、現代の階級理論が注目されるところだと思いました。

いかにして、戦後日本の格差は拡がっていったのか ★★★★☆
いかにして、戦後日本の格差は拡がっていったのか。
本書に丁寧な説明が施されている。

敗戦
農地改革
組合運動
集団就職
無知の涙
1970年 大学進学率 17%
学生運動 社会主義革命
連合赤軍 東アジア反日武装戦線
砂の器
受験地獄
一億総中流
高度経済成長
バブル崩壊
マルキン マルビ
勝ち組負け組
ITバブル
ホリエモン
正規vs非正規労働者
ワーキングプア
小泉改革
民主党社会主義政権
戦後日本社会総括の一視角 ★★★★★
「階級」という言葉は、長らくマルクス主義イデオロギーの特定用語と見られがちであった。それゆえ、冷戦社会の終焉後、それは死語と化した感があった。著者は近年、現代の格差社会に対してこの概念を「復活」させることによって、むしろ斬新と思われる論を展開している。
本書で著者は、この階級概念で戦後日本社会の社会構造変化を年代ごとに様々なデータを駆使して分析してみせる。それによって、当時は時代的制約によって「階級論者」によっても見落とされていた問題を新たに掘り起こし、これまでの「常識」を覆していく。曰く「敗戦後の五年間は、経済的な格差が比較的小さかった」、「経済的格差は、六〇年代初めにピークに達し」た、「『一億総中流』論が完全に見落としていたのは、企業規模間格差の存在である」、「(八〇年代)格差拡大は、まず中小零細企業労働者の貧困をもたらした」等々。そして、現代の非正規労働者も「労働者階級」以下の「アンダークラス」と位置づける。
かくして、「格差と貧困の背後にある社会の構造そのものを問題にするためには、階級、そして階級構造という概念を使う必要がある」という著者の論は、極めて説得力を持ってくる。
付言すれば、著者は各年代ごとに世相を映し出す様々な人物やできごと―吉永小百合や全共闘運動、東アジア反日武装戦線、秋葉原無差別殺傷事件等を取り上げているが、その切り口が時に奇抜で小気味いい。