この新しい21世紀版なら、熱心なファンでも確実に、お気に入りの句や短編を読むことができる。さらに、新たな素材が数多く加わり、ドロシー・パーカーの生涯にわたる作品の全体像が、より幅広く、より忠実に描き出されている。『The Portable Dorothy Parker』には初収録となる「Such a Pretty Little Picture」などの短編のほか、『Vogue』『McCall's』『House and Garden』『New Masses』といった多彩な雑誌に寄稿した選りすぐりの記事も収録。うち2本は、パーカーにしてはめずらしい、インテリアを題材にした記事だ。パーカーのシリアスな作品の中心に位置するのが、政治的な色あいの濃い作品――人種、労働、国際問題など――だ。この分野では、「Soldiers of the Republic」(邦題「共和軍兵士」)に加えて、いずれも『New Masses』誌に初出の「Not Enough」と「Sophisticated Poetry-And the Hell With It」の復刻版が収録されている。高尚さとばかばかしさ、それに恐ろしさが混ざりあう「A Dorothy Parker Sampler」には、いわばお試しメニューといったおもむきで、詩句や短編、エッセイ、政治的記事、執筆をめぐる発言、それに作家本人が書きとめるつもりのなかった親しみやすい即興の韻文が集められている。
新たに追加された2つのセクションは、パーカー自身の姿をできるかぎり豊かに紹介することを意図している。「Self-Portrait」は、『The Paris Review』誌による1956年のインタビューを復刻したもの。このインタビューは、20世紀の著名作家に話をきく同誌の有名な対話シリーズ(「Writers at Work」)の一環としておこなわれた。現在も続いているこのインタビュー・シリーズは、作家が出版まえに原稿を編集できるため、ちょっとした自伝のようになるという点で、非常に興味深いものになっている。
「Letters: 1905-1962」は、「完全無検閲版パーカー」というサブタイトルのつきそうな内容だ。このセクションには、12歳のドロシーが夏休みをすごしていたロング・アイランドから父に送った1905年の手紙にはじまり、マリリン・モンローに抱いていた好感を記した1962年のハリウッド発の書簡まで、半世紀にわたってつづられた往復書簡が収録されている。