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感染症は世界史を動かす (ちくま新書)

価格: ¥861
カテゴリ: 新書
ブランド: 筑摩書房
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作者の恐れが現実になりました! ★★★★★
岡田晴惠さんの著書を何冊か読みましたが、どの本でも新型インフルエンザの脅威を真剣に心配している事が伝わりました。そして、作者の予想が的中し、現在世界が新型のインフルエンザにおののいています。やはり、専門家の指摘を国も真剣に受け止めて対策をきちんとしていなかった点が悔やまれます。
被害者は、年齢の若い子どもたちです。検疫官が足りない,という舛添厚生大臣はこの岡田さんの本を読んでいたのでしょうか? 専門家である岡田さんの真剣な訴えに真摯な受け止め方をしない国の姿勢に憤りを感じますね。
ぜひ、この本を読まれる事を勧めます。
迫力のある本です ★★★★★
著者は薬学部出身の感染免疫学者。
ちょっとした、「トリビアの泉」的知識を得るのに良いかと思って買ったのだが、とんでもなく迫力のある本である。

迫力の理由の1つは、感染症と歴史の関係付けの研究への思い入れからくる綿密な調査と思いを込めた記述によるのだろう。
ハンセン病、ペスト、梅毒、結核などについて流行の状況、病理、当時の治療法、人々の対応、社会への影響などが分かりやすく記録されている。死に直面した人たちの文化史としても面白い。これを読んで、ヨーロッパに多く残されている「死のダンス」の絵が生まれたり理由がよく分かった。

理由のもうひとつは、現在も大流行の可能性がある、新型ウイルス対策の必要性への真剣な思いが伝わってくることによるのだろう。
H5N1型ウイルスのもたらしうる被害の大きさは知る人ぞ知るの情報なのだと思うが、この本を読んでそのリスクの大きさが実感できた。

私は情報セキュリティの研究者でコンピュータウイルスに対する疫学的研究なども実施しているが、新型インフルエンザにより全世界で最大3億6千万人の死者が出るかもしれないという記述を見ると、私たちが扱っている対象は非常に責任が軽いという気にさえなってくる。

ペストの流行時に、井戸に毒を投げ入れたといううわさからユダヤ人を虐殺した話や、梅毒をナポリではフランス病と呼び、フランスではナポリ病と読んだ話など興味深い雑学的知識もいっぱい記載されている。
題名から少し脱線気味かな ★★★★☆
感染症は人類が誕生して以来ずっと闘ってきたものである。
ときには小さく、ときには大きな感染を引き起こしながら、ものによっては克服され、ものによっては今も闘いは続いている。
本書ではそのような感染症と人間の闘いを扱っている。
ハンセン氏病・ペスト・梅毒・結核・インフルエンザ。
時代と感染症は変わってもその流行に人間の営為が深く結び付いていることには驚かされる。そもそも始終大流行していては宿主が死に絶えてしまうから、適度な共生関係が保たれているはずである。そのバランスを崩すのは環境の変化。人間の活動の範囲が広がることにより、流行が引き起こされるということが歴史から学ぶことができる。
そして医学のいまだ進歩していない時代においては現代以上に感染症は恐怖以外の何物でもあり得ない。今から思えばまったく効果のないような対策を講じながら必死に闘ってきたことがわかる。そのような多くの対策の中から現代に通じる公衆衛生が作り上げられていったことも。

著者の専門が歴史ではなく、感染症対策ということもあってか、医学的な説明が詳しい。それも専門的すぎず、一般の読者にも理解できるように平易に述べられているのはよいことであろう。
ただ、専門性が悪い方向に出ている部分もある。最後の章で新型インフルエンザの危機管理に多くのページが割かれているることである。どうも題名の「世界史」からみると勇み足とも言おうか、将来的には世界史的な出来事になるのかもしれないが、現時点では歴史の範疇には入れがたいというのが実際の印象である。また、インフルエンザウイルスの変異について詳細に述べているのも歴史にかんする叙述とは多少相性が悪い気もする。ただ、スペインかぜがなぜあそこまではやったのか、インフルエンザは将来の世界史を動かす感染症になりる可能性についての示唆にはなる。著者の気持ちは分からなくもないが、題名から見ると少し肩に力を入れすぎたかなと思った。
途中までは良いのですが・・・ ★★★☆☆
タイトル通り,感染症と世界史を紹介してくれることに絞ってくれた方が良かったと思います.最後の章(あとがきによると,ここは別の原稿を付け足したらしい)で,新型インフルエンザの恐ろしさを警戒することの必要性を,一所懸命に説いていますが,何かにとりつかれたように文体が変わり,ここだけページ数がやたらと多く,同じこと何度も書いてしまっているくどい文章を読まされる羽目になります.本の趣旨からすると,最後の章はおまけ的なところであり,著者の新型インフルエンザの恐怖の思いが強いことはわかりますが,最後まで読むのがいやになってしまいました.この著者は,出だしもそうですが,思いを前面に出すと文章があやふやになってしまうので,なるべく事象のみを淡々と書いてくれる方がいいです.
人と病気が相互に影響しあう ★★★★☆
病気が人間の歴史を変えてきたと言うことを知ったのは、栗本慎一郎を結構読んでいた今から20年ほど前、彼の著書によってである。彼の主張にいくらかSF的な部分があるのに比べ、本書は著者が国立感染症研究所の研究員であるためか、空想的な推測を廃している。それで、産業革命が劣悪な労働条件を生み出し、それによって結核が蔓延すると公衆衛生が求められ、そのために資本家中心の社会通念が壊される、と言った人と病気が相互に影響しあってきた様を明らかにしている。『感染症は世界史を動かす』と言うタイトルに誇張はない。