そのヤマネを著者は30年近くも追いかけてきた。始めの8年は教え子の小学生たちと一緒に野外研究をしたり、飼育箱で育てて赤ちゃんの生育の様子などを観察したという。その後は「ヤマネ語」を解明したり、ヤマネの生活の様子を本格的に調査し、いろいろな分野の専門家とも協力しながら科学的研究を続けてきた。
こんな貴重な科学研究の成果を、子どもたちにも親しみやすいように、写真、絵、図とともに物語調で紹介したのがこの本。ヤマネのチッチの1年を通じて、冬眠、体のつくりや鳴き声の意味、なわばり、交尾・巣づくり・子育て、天敵との闘い、えさ探しなど、さまざまなことを紹介している。ヤマネという題材で動物の生態や自然の生活のおきてなどを学ぶことができる。
生き物観察のおもしろさを教えてくれるだけでなく、厳しい自然の中で精いっぱい生きるヤマネの姿を通じて、いのちの素晴らしさと大切さを感じさせてくれる優れた科学の読み物。小学校4年生以上が対象。(翁 ゆり)