初期の傑作部類に入る
★★★★★
海洋開発に焦点を置いた本格推理。
海底建造物での密室殺人事件は、神津島との風土を巡る伝説と絡み合って不思議な雰囲気を醸し出している。主人公と容疑者の妹との恋愛は少し取って付けたような感じが否めないが、その他の展開はトリックを初めとして大いに納得できるものであり、西村作品の中でも傑作の部類に入るのではないだろうか。
また、殺人の背景となった海洋開発は執筆当時(1972年)活発だったものであり、神津島港へ定期航路で辿り着くのにはしけへ乗り継がなければならない部分の描写なども含め、発表から流れた38年余の歳月を感じさせる。