地味な組み合わせですが、、
★★★★☆
明治後半に作られた割と新しい長唄三曲のようです。
坪内逍遥の詩の世界が美しい「新曲浦島」。某お家元の御曹司が踊っているのを観て思わず感涙し、調べてみると坪内逍遥作詞ということで余り耳馴染みがないけれども買ってしまいました。「浦の苫屋の秋の夕暮れ」というか、そういう古歌的な美しい想像の海の世界から、船乗りの日常の海へと劇的に変化しながら、歌詞がきっちり曲に乗っているのはさすがです。それに漁師の振りを付けた舞踊家もすごいと思います(曲自体には浦島太郎は出て来ないけれども、舞踊を観ると「浦島太郎かな?」と思える)。
「しずやしず、しずのおだまき」がキャッチフレーズの「賤の苧環」。義経と別れた静御前が頼朝の前で義経恋しの舞を舞うという、語り物のように芝居要素の強い曲です。明治末期の曲というのは知りませんでしたが、歌詞の一貫性や史実の細かい参照などは演劇改良運動なんかの影響かなと思いました。
多摩川は初めて聴きましたが、歌詞に如何にも近代的で堅い部分があり、違和感があります(曲は普通の長唄)。