エルフ、人間、ドワーフ、ホビットが集う「エルロンドの会議」が開かれる。「指輪を携えていく使者には誰がなるのですか。」ビルボが聞く。誰一人勇者たちは答えることができない。フロドに向けられた顔は無い。フロドは「自分の声を聞いて、まるで別の意思が自分の小さな声をかりてしゃべっているのではないかといぶかしく思い」ながら言う。「私が指輪を持っていきます。」誰もがフロドに強制するそぶりは見せなかったが、誰もがそれを望んでいた。どうしてホビットなのだろう。弱きもの、小さきものに使命を与えるのだとしたら、どうして「人間」がそういう位置付けにならなかったのだろう。エルロンドさえ持つのも嫌だと怖れる「指輪」とは何か。映画を見てこうだと思っていたことがいまは崩れつつある。ゆっくりと考えていきたい。サムは呟く。「とんで火に入る夏の虫って、このこってすだ」
ガンダルフを先頭に困難な未来に「旅の仲間」たちは出発する。さらに困難な「モリアの坑道」に行こうと決めた時にガンダルフは言う。「結果的にどうなろうとも、人は必要が選ぶ道を歩まねばならぬのじゃ!」旅は決断の連続である。「指輪物語」をシュミレーションゲームの元祖の様に言う人がいるが、本来は違う。本作の登場人物たちは後戻りはできない。