私は飛んだ。
★★★★★
出会いは小学四年の春。私にとってかけがえのない一冊。反骨のノロシをあげるきっかけをつくってくれました。夏休みの宿題である読書感想文、課題図書があるにもかかわらず、私はこれを選び、穴があくほど読みこんで感想文を書きました。大人はたいそう気味悪がりながらも作文コンクールへの出展の候補に推してくれました。しかし、はずされました。なぜならコンクール出展作は給食の時間に書いた本人が音読せねばならないために、まさかご飯を食べようとしているさなか死体の処理方法など聞かせられないという、至極まっとうな理由からでした。理不尽な。でもそうしたものなのか。生まれ落ちて初めて、煩悶し、泣き、図書室に隔離されたものでした。目の前に広がる世界との距離を頭で体で知ることのできた、物言わぬ師といえる一冊。