マーラー三番がこんなにスケールが大きく美しい曲だったとは…これ以上の三番は無いかも。
★★★★★
ティルソン・トーマスの指揮作品を聴くのは初めてですが…ジョン・バルビローリに似て緻密な演奏でありながら取り澄ました所や冷たい素っ気ない所を少しも感じさせないのが魅力…ショルティのマーラー演奏はシルキィな滑らかさと例えられますが、バルビローリやトーマスは薄手のバージンラムのセーターの様に適度に滑らか、柔らか、温かい。
ディスク【1】では、トーマスは決して品の無い虚仮威しには頼らず正攻法で誠実に進みます。ロンドン響は…上品さなら世界一の弦…個人技に優れ輝かしく明るい響きの管…ビックリするほど思い切りよいティンパニの強打(笑)適度に緊張感が有って全く弛緩しない…心地好い演奏ですね。
ディスク【2】はジャネット・ベイカーの独壇場かと思いきや…終楽章のトーマスの指揮は神懸かってると言うか、若さに似合わない成熟した巨匠性を感じさせる…ゆったりと決して急がない、盛り上げ過ぎない息を呑む様に美しいエンディング…凄い…凄い…!
「リュッケルト歌集」はオケが素晴らしいのでベイカーも彼女の数有る録音の中で最高の出来…「私はこの世に捨てられて」は涙無しには聴けない…アルト独唱のこの歌集で、これを超えるのは絶対無理だと思わせられます。
ここまでの演奏を聴いてしまうと…ベイカー大好きな私としては、「千人」「歎きの歌」も録音して欲しかった気がするなあ…「復活」はバルビローリとのベルリン盤が、「大地」はクーベリックとのバイエルン盤などが有るけどね。