本当に日本は「台頭」しているのか?
★★★★☆
現在はThe rise of Chinaの時代であり、米国のアジア専門家の目も中国に注がれている。そんな中、日本が「台頭」しているという異彩を放った主張をしているのが本書だ。パイル教授には実際に会ったことがあるが、紳士であり、堅実な研究をしている方だという印象を持っている。本書は開国から現代までの日本外交を分析し、国際秩序の構築ではなく、それへの適応こそが日本外交の特質であり、今後もそれは続くであろうとしている。教授によると、開国から20世紀後半までは、西洋へ追いつくという国家目標が明確に存在していたため、適応型の外交がうまくハマり、日本は驚異的な発展を遂げたが、冷戦終結以降は、国際秩序の激変には未だ日本はうまく適応できていない、としている。
それでも教授は日本の将来に楽観的である。バブル崩壊後の15年、日本は停滞しているが、これは激変する国際秩序を慎重に見極めているからであるとし、過去のしがらみにとらわれず、グローバル主義である平成世代の台頭により、日本は国際政治の舞台に復活してくるだろう、としている。日本人として日本に前向きな評価をしてくれるのは嬉しいことだが、さすがに楽観的すぎるのではないか、と思った。教授は小泉改革がターニングポイントだったとしているが、果たして現在、小泉改革の残滓がどれだけ残っているか。平成世代がどれだけ政治の世界で力を持っているか。昨今の政治情勢を見る限りは、なかなか日本がrisingしているとは思えないのだが。
とは言え、日本の将来についての議論を呼びかける効果はあった書物だと思う。米国を代表する日本専門家がどういう議論をしているのか、理解しておく必要性は大きい。