豊饒の海はもはや瀕死に近い。諫早湾再生を急がなくては。
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干潟の海に生きる魚たち―有明海の豊かさと危機
有明海で徹底的なフィールド調査を蓄積してきた著者らの筆は、ときにユーモアを交えて、軽妙かつわかりやすく、こんな本を待っていた!との思いで一気に最後までページを繰った。ほんものの学者に久しぶりに出会えたという爽快感とともに、著者らの悔しさが胸に伝わってくる。じつは有明海の魚のことなどまだほとんどわかっていないが、ようやくここまではわかってきたと謙虚な学者たちは率直に語る。諫早湾にギロチンが落とされて12年。事前のアセスメントで指摘されていた有明海全体への悪影響の問題をひた隠しにして突っ走った「諫早湾干拓事業」が与えた影響は、あの豊かであった有明海の水産資源に致命的な影響を与えた。一刻も早く諫早湾の水門を開放して干潟再生をはからねばならぬ理由とその意味が、本書をひもとくとよくわかる。諫早湾再生と有明海のエコツーリズムには必携の書がまたひとつ生まれた。