本書は、駿台で化学を長年教えている石川正明工学博士(京都大学)による本格的参考書であり、「原点からの化学シリーズ」の一冊。
高校や予備校の通常の授業や通常の参考書を数段階掘り下げた内容で、いわゆる「考える化学」「理解する化学」を実現するためには素晴らしい本。
本書を理解することで、今まで丸暗記していた内容の論理的理解が可能になるだろう。
ただし、本書の内容は極めて論理的であるゆえ、本書を理解するには相応の理解力とある程度の化学の基礎力が必要。
従って、他教科の学習を終えた受験生や化学を根本的に理解したい受験生にはお薦め致します。
各自の化学に対する情熱や他教科の勉強の進度などを考慮して使用すればよいでしょう。
ただし、大学進学以後も有益な書物であるので大学でも化学を学びたい方は買う価値は十分ある。

個人的には高校生の方にはぜひ読んで欲しいです。日本の教科書では省かれているけど化学を学ぶ上で絶対に必要となる知識や考え方が載っています。内容だけで言えば星五つです。

ただ、現状でこの本を完璧に消化できる時間があるかは正直微妙なところです。軌道に関する最低限の知識はこの原点シリーズの有機編や無機編にもある程度は書いてあります。その上でこの理論編をやるのは、受験生にとってなかなかの負担になると思います。「受験」化学においてそれほどこの本の必要性は感じられません。テクニック的な部分もあまりないです。そういった意味で、受験参考書として星ひとつ減点しました。
逆説的ですが、やはり最低限の暗記と言うか、とりあえず根本にある理論その他を無視して闇雲に覚えることも初期の段階では絶対に必要で、それを終えた後にこの本を読むと「あぁ、そういうことだったのか」という感動が得られると思います。だから、ある程度化学がわかってきて「で、結局なんでこうなるの?」という疑問が生じた時にこの本は意味を持つと思います。初学者がいきなりこの本を読むのはむしろ化学を嫌いにしてしまう要因になりそうで気軽に勧められるものではありません。

ほかの教科とのバランスも考えて余裕ある受験生、あるいは大学生にも勧めることができる本だと思います。