鳥の羽というのはとても繊細な線で構成されていると思う。だから、精密に描かれたものはとても素晴らしいと思う。そういう絵をいくつか見て、すばらしいと思った。鈴木まもるさんの鳥の絵は、細密なだけとはちょっと違う。筆や線で描かれた小鳥たちは、生きた羽使いや息吹まで感じられる。ちいさくてふわふわとした生き物の体温をそこに感じる。

鈴木さんはある日使われた後の鳥の巣をみつけ、その造形の素晴らしさと、鳥たちの生き様に触れて、鳥の巣集めがやみつきになってしまった画家さんである。
20年以上山の中に住み、定点から鳥たちの四季をともに体験してきた。
そういう生活の中から、地に足のついた、生きた絵が生まれたと思う。
小鳥の存在に気付かずに暮らしていたら、それは人生の大いなるギフトを受け取り損ねている。小鳥の大好きな人は勿論、これまで知らなかったという人も、きっと感動してしまう。
優しいことばで書かれているので、誰にでも親しみやすい。

画家でもある著者が、山で鳥の巣を見つけたことをきっかけに『鳥の巣研究家』に｡だから、もちろん挿絵も著者である鈴木まもるさんである｡この挿絵もまたぬくもりが感じられほっとする｡
鳥の巣といえども、巣を作る場所、使う材料や形もみな違っている｡表紙も含めてどのページも読んでいて（眺めていて）楽しい、わくわくする一冊｡

ちなみに、この本を読んでまもなく、自宅横の木の剪定をしたらメジロの巣がくっついていた｡メジロの巣だとわかったのも、巣材にビニールが使われていたことを納得したのもこの絵本のおかげだった｡