コメント
★★★★★
この本の広範な内容から見て、ほんの一つの切り口に絞ったコメントに過ぎないが、いわゆる「偽りの記憶症候群」論争に関して、どの方向にバイアスがかかるにせよ何らかのメッセージを発する前に、少なくとも本書を読み通しておくことが前提になるだろう。精神医学や神経生理学の狭義の専門家、または専門的な臨床家でない読者にも十分理解できる質の高い丁寧な記述である。難点はかなり高価なことだが、この内容であれば妥当である。なお、本書はあくまでも本書の出版年である1996年までの最も質の高い世界標準であり、言うまでもないことだが、それ以後のさまざまな研究の動向を知りたい読者は個別の論文に当たっている。それは専門家たちの話であるが、言いたいことは、本書のようなスタンダードはそれ以後出ていないし、そう簡単に出せないということである。また、今年の夏、本書の中心的な著者ヴァン・デア・コルクの教授を受けている専門家の演習に出て聞いたことだが、本書の内容もすでにかなりの程度(本書の内容を発展させる方向で)更新されつつある。