気軽にロックの歩みを一望できる、音楽愛に満ちた入門書
20世紀半ばに誕生したロックは、なぜ若者の心を捉え、発展していったのか。本書は、その歩みを丹念に追う「ロック入門書」です。しかし同時に、「音楽の変化も知りたいし、ミュージシャンの過激なエピソードものぞきたいし、レコード産業の裏側も見たいし、ロックを生んだアメリカ社会にも首をつっこみたい」という著者の思いそのままに、ロックを取り巻くさまざまな事柄にも触れている「欲ばりな本」でもあります。
ガイドとして未知のアーティストを見つけるのはもちろん、アーティストの意外なエピソードに驚くのもよし、音楽産業の変化を学ぶもよし、音楽を生み出した社会背景を知るもよし。ロックの歴史からは、さまざまなことが見えてくるはずです。
【目次】
■1. ロックンロールの誕生
熱狂と非難の中で──エルヴィスの登場
ロックンロールは、どこからどうして生れたか
歌より、誰がうたうかが問題だ
ルーツのひとつ、ブルース
レイス・レコードからR&Bに
カントリー&ウェスタンの黄金時代
「ロック・アラウンド・ザ・クロック」の大ヒット
エルヴィスの中で、黒人音楽と白人音楽は一体となった
■2. 反抗のエネルギー
ロックンロールの共通項
ロックの詩人、チャック・ベリー
「ぼく自身が生きた炎なんだ」
豊かな生活に背を向けたビート族
『乱暴者』『理由なき反抗』の青春
反逆のヒーローDJ、アラン・フリード
保守層の反発を買った黒人音楽への肩入れ
新しい消費者の出現
インディ・レーベルの活躍
45回転レコードの普及
■3. 『アメリカン・グラフィティ』の時代
なぜ一九五〇年代のヒット曲を使ったのか
ティーン・アイドルの全盛期
ロックンロールが死んだ年
オールディーズ・バット・グッディーズ
プロデューサーやソングライターの台頭
キャロル・キング、ニール・セダカら都会派の活躍
億万長者になったプロデューサー
「恋やセックス以外にも重要なものがあるんだ」
答は風に吹かれている
■4. ビートルズ・ブームとソウルの誕生
緊張気味のビートルズを待っていたもの
ビッグ・スターは辺境の地から生まれた
ビートルズの発見者、ブライアン・エプスタイン
ビートルズの宣伝作戦
一位から五位までが、すべてビートルズの曲に
〝反抗〟を売り物にしたローリング・ストーンズ
人の数だけ、ソウルの定義はある
新しい黒人のイメージを作ったモータウン
「黒人であることに誇りを持て」
■5. ウッドストック・ネーション
ボブ・ディラン、フォーク・ロックに転身
「サンフランシスコに行くときは......」
ロックンロールからロックへ
ライヴ活動を停止したビートルズ
「愛こそはすべて」
ウッドストック・フェスティヴァルの熱狂
次第に明らかになった〝ユートピア〟
巨大化への道を歩み始めたロック・ビジネス
〝三十歳以上の人間を信用するな〟
■6. ロックの成熟
次から次にヒーローは死んだ
「わたしの手の届くところにいてちょうだい」
「火と雨」の混乱をくぐりぬけて
伝統の再発見としてのカントリー・ロック
イギリスのロックの新しい展開
クールで都会感覚のグラム・ロック
黒人音楽の行方を占うヒット曲
ファンクのスーパースター
音のないタイトル曲「暴動」
クロスオーヴァーで、ロックは大人のものに
ロックはエンターテインメントの主流に
多彩な女性ロック歌手の登場
ディスコ・ブームを作った『サタデー・ナイト・フィーヴァー』
ロックと政治・社会問題
誰もがスーパースターになればいいのか
■7. パンクとレゲエ
パンクはアメリカで生まれた
きわどい演出が人気を呼んだ、セックス・ピストルズ
〝オレは暴動が欲しい〟
「決してロック・エスタブリッシュメントにならない」
レゲエの誕生
パンクとレゲエの交流
ニュー・ウェイヴとシンセサイザー
新しいタイプのインディ・レーベル
「いきのいい音楽を即レコードにする」
アメリカの不振の中で
パンクの手袋は完全に裏返った
■8. マルチ・メディア時代のロック
スーパースターの誕生を助けたMTV
「テレビ・ベイビーの感覚に訴えよ」
黒人ミュージシャンの活躍
バンドと聴衆を結ぶもの
■9. 世界音楽の中のロック
インディ・ロックの商業性
ヒップホップの変化と多様化
ダンス・ミュージックとロック
世界史の転換とワールド・ミュージック
社会の変化が音楽のリズムを変える
付録:参考音源リスト